日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG20] 原子力と地球惑星科学

2024年5月26日(日) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)、濱田 崇臣((一財)電力中央研究所)、笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)

17:15 〜 18:45

[HCG20-P03] 花崗岩の割れ目頻度と岩相の関係に関する検討-中部日本、土岐花崗岩の事例-

*笹尾 英嗣1、湯口 貴史2 (1.国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター、2.熊本大学)

キーワード:花崗岩、割れ目、地層処分

花崗岩などの結晶質岩中の割れ目は地下水や物質の移行経路として機能するため,高レベル放射性廃棄物の地層処分においては,割れ目密度や走向傾斜,充填鉱物などの特徴を理解することが重要である。
中部日本に分布する土岐花崗岩は,白亜紀後期に形成された岩体で,14×12km程度のほぼ円形の分布を示す。本花崗岩は,岩体縁辺部から中央部に向かって白雲母-黒雲母花崗岩(MBG),角閃石-黒雲母花崗岩(HBG),黒雲母花崗岩(BG)の3つの岩相に区分されている(湯口ほか,2010)。
本花崗岩分布域で掘削された掘削長500~1300mの19本の深層ボーリングで取得された割れ目に関するデータから,花崗岩の岩相境界で割れ目頻度が大きく異なる場合のあることが報告されている(Yuguchi et al., 2012)。
開口割れ目の形成は体積の増加をもたらすため,圧縮場では体積の増加をもたらすような地質現象は想定しづらい。一方で,高温型石英から低温型石英への相転移により数%の体積が減少することが知られており,仮にこうした現象に伴って開口割れ目が形成されるとすれば,マグマ冷却過程が割れ目の形成に影響したことになる。したがって,岩相(鉱物組成)が異なることにより,マグマ冷却時の諸過程が異なる可能性があり,こうしたことが岩相間での割れ目頻度の相違を生み出している可能性がある。そこで,土岐花崗岩の3つの岩相と割れ目頻度との比較を通じて,割れ目の形成メカニズムを検討した。
岩相ごとに割れ目頻度を見ると,MBGで比較的大きいものが多く,HBGとBGではMGBよりも小さい。こうした特徴のため,MBGとHBGでの境界では岩相間での割れ目頻度の差が比較的大きく,HBGとBGとの境界では小さい。MBGの割れ目頻度は,土岐花崗岩体北西部から西部および南部では比較的大きく,北東部では比較的小さい。MBGとHBGの境界では,岩体南部と西部ではMBGの方が割れ目頻度は大きいが,岩体北東部ではHBGの方が大きい。
MBGの成因としてマグマ貫入時の周辺母岩(美濃帯堆積岩類)の取り込みと,HBGおよびBGとは異なるマグマの同時期貫入の2つが考えられている(湯口ほか,2010)。岩体北西部から西部では母岩は美濃帯堆積岩類だが,北東部は美濃帯と濃飛流紋岩類である。MBGは西部で比較的薄く,東部で比較的厚いと推察されている。こうした周辺母岩の違いが割れ目頻度の差異を生じさせた可能性が考えられる。
しかしながら,岩相分布(湯口ほか,2010)と割れ目頻度分布(Yuguchi et al., 2012)を比較すると,両者は一致しない。このことは,割れ目頻度の差異は局所的な要因によって形成された可能性を示しており,岩相境界での割れ目頻度の変化を理解するためには,岩相と局所的要因の双方に基づいた検討が必要であると考えられる。
本研究の一部はJSPS科研費 20K05410の助成を受けて実施したものです。

参考文献
Yuguchi et al. (2012) Eng. Geol., 149-150, 35–46.
湯口ほか(2010)岩石鉱物科学,39,50–70.