日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG22] 気候変動への適応とその社会実装

2024年5月26日(日) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:山野 博哉(国立環境研究所)、石川 洋一(海洋研究開発機構)、大楽 浩司(筑波大学)、田村 誠(茨城大学地球・地域環境共創機構)

17:15 〜 18:45

[HCG22-P04] 気候変動適応のための都市緑化による雨水貯留効果ならびに冷却効果に関する研究

*青木 文弥1大楽 浩司2 (1.筑波大学 理工情報生命学術院、2.筑波大学 システム情報系)

キーワード:気候変動、都市緑化、グリーンインフラ

近年の世界的な気候変動や急速な都市化は、さまざまな都市環境問題のリスクを高めている。グリーンインフラの一つである都市緑化は、都市型水害の抑制に寄与する雨水貯留効果や、ヒートアイランド現象の軽減をもたらす冷却効果などを持つことが知られており気候変動適応策として注目されている。これら2つの都市緑化の都市環境改善効果について、それぞれ独立して評価した研究は多く見られるが、相対的に議論した研究は少ない。都市緑化の雨水貯留効果、冷却効果はどちらも陸面の水収支が関与しているという類似性をもつことから、これら2つの効果について単独で評価するだけでなく相対的に評価することは、より柔軟で実現可能な気候変動適応策の導入につなげられると考えられる。
そこで我々は都市緑化の雨水貯留効果と冷却効果について気候や緑化条件の違いによる感度評価や相関性の議論を行う。そして気候変動適応策の1つとして都市緑化の導入を検討する人々に対して、基礎的な科学的知見を提供することを本研究の目的とする。人為的な熱寄与や風環境、土地の傾斜や排水設備といった街区スケールでの都市の影響は本研究での議論の対象外とする。
今回はこれらの効果を定量化するために先行研究(M. O. Cuthbert et al, 2022) でも使用されていた陸面モデルSMBMについて、現実の土壌水分の変動を正確に再現できるか評価を行った。手法としては気候の異なるカナダの3都市で行われた屋上緑化の雨水流出の実証実験の研究 (Andrew W. Sims et al, 2016) をもとにモデルで実験条件を再現し、得られた都市ごとの対象期間内の降水量に対する流出量について実験結果との比較、許容できる範囲の誤差の定量化などを行った。さらに屋上緑化や公園緑地といった都市緑化事例に応じてモデルのパラメータを変えたときの雨水流出の違いなどを評価し、SMBMのモデル特性や雨水貯留効果、冷却効果それぞれについてパラメータごとの感度を議論した。今回得られた結果や考察をもとに、対象地域内での都市緑化による効果の評価を進め、本研究の目的の達成を目指す。