日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG23] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2024年5月28日(火) 13:45 〜 15:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:菊地 一輝(中央大学 理工学部)、池田 昌之(東京大学)、川村 喜一郎(山口大学)、清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、座長:清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、池田 昌之(東京大学)、川村 喜一郎(山口大学)、菊地 一輝(中央大学 理工学部)

14:15 〜 14:30

[HCG23-03] 白亜紀の深海層状チャートに記録されたOAE 1aを通した風化プロセス変化

*中川 友紀1張 天逸2池田 昌之1 (1.東京大学、2.早稲田大学)

キーワード:OAE 1a、温暖化、風化、低緯度

温暖化によるケイ酸塩風化の促進は、炭素循環において重要な負のフィードバックである。熱帯域の風化は全球ケイ酸塩風化の3/4を占めるが、温暖化への応答については輸送制限風化であることもあり、議論が続いている。白亜紀海洋無酸素事変(OAEs)のような超温暖化イベントは、温暖化時の物理風化の変化を調べる手がかりになるかもしれない。Nakagawa et al.(2022)は白亜紀AptianのOAE 1a時に深海層状チャートにおいて陸上植物片が増加することを報告し、超温暖化に伴う植物の大量流出を示唆した。しかしながら、それに伴う風化の変化は明らかになっていない。そこで本研究では、チャートを含む生物源Si、Ca、Pに富む堆積物に適用可能な風化度指標RW値(Cho and Ohta et al., 2022)を深海層状チャートに適用するとともに、電界放出型電子プローブマイクロアナライザー(FE-EPMA)による粒子スケールでの組成観察と合わせて、供給源と風化度の変化を検討した。その結果、AptianのRW値は8〜35で、OAE 1a期間中に低い値となった。また、苦鉄質/珪長質(M/F)比は0.5〜0.8の値を取り、深海層状チャートの後背地の変化を示唆した。FE-EPMA観察では、粒径数μm程度のKに富む長石やシルトサイズのNaに富む長石が確認され、それぞれ風成塵、河川起源と示唆される。K/AlはNa/Al、RW、M/Fと明瞭な逆相関を示すことから、カリ長石は主にやや風化した風成起源であるのに対し、曹長石は風化していない苦鉄質な海洋島の河川由来であり、混濁流ないし底層流によって運ばれた可能性がある。OAE 1aの負のCIEの開始時のNaの増加とRWの低下は、深海層状チャートへの新鮮な苦鉄質岩の寄与が増加したことを示唆する。同時期に陸上植物の増加とmmスケールでのシルト質斜交葉理の堆積が観察されることから、熱帯暴風雨、地震、底層流などの千年規模の変化により植物が大量に流出した可能性がある。OAE 1a時の例外的に粗粒な苦鉄質岩片は、火山島での大洪水に由来する可能性があり、OAE 1aでの超温暖化イベント中に千年規模で物理的風化が促進されたことが示唆される。