15:45 〜 16:00
[HCG23-07] 湿雪雪崩及び土砂流出を伴う災害発生斜面における土砂移動に関する調査・解析
キーワード:北海道、地質災害、湿雪雪崩、土石流
道路交通の安全確保において、斜面災害への対策は重要である。特に積雪寒冷地である北海道では、夏季の降雨に伴う土砂災害に加えて、冬季の雪崩を伴う土砂災害にも注意を要する。近年、気候変動による気象災害の規模や形態の変化とその影響が指摘される中、多量に積雪が残る時期の気温上昇や降雨に伴う融雪による湿雪雪崩の発生及びそれに付随する土砂流出が北海道内でも確認されている。この傾向は人為的な気候変動の影響で今後も続く可能性があり、湿雪雪崩及び融雪・降雨を考慮した土砂災害への対策は急務である。斜面災害の対策のためには、斜面災害発生地域における地形や堆積物特性を理解し、土砂災害の形態を把握することが重要である。
本研究では、北海道広尾町における土砂・雪崩災害の発生斜面を対象として、2006年7月及び2019年10月に取得された航空レーザー測量による数値地形図の差分解析により地形変化箇所を抽出し、抽出された地形変化箇所における詳細な地形地質調査及び土質試料の採集・試験を行なうことで、対象地域における土砂移動分布及びその移動形態について検討した。
2時期の航空レーザー測量による数値地形図の比較の結果、対象地域内の5つの渓流の内、一つで上流部での地表面高度の最大4.5 mの減少、中流部での地表面高度の最大4.8 m増加が検出された。以上の地域における標高差分検出域における現地調査の結果、上流部では斜面の崩壊跡とその下部の崖錐が確認でき、横断面形状はV字型を呈する。一方、中流部の谷底は広がった凹型を呈しており、礫支持で崩れやすい堆積物が表面を覆っていた。これらの堆積物は斜面傾斜方向に伸びるローブ状の地形を呈しており、先端に人頭大の大礫を含み、表面は拳大の大礫で覆われ、内部は2〜10 cm程度の礫支持で木片も含んでいた。以上の特徴は石礫型土石流の特徴と一致する。また、標高の異なる3地点で採取した土質試料の内部摩擦角は斜面最下部で若干大きい傾向にあるが、粒度組成や含水比に3試料間で大きな違いは見受けられなかった。そのため、当該斜面における堆積物は比較的均質な物理特性を持つと判断できる。
以上の検討結果、数値地形図の標高差分により抽出された地形変化箇所は、航空レーザー測量による地形データ取得が行われた2006年7月以降2019年10月までの13年の間に発生した斜面上流部の崩壊による地表面高度の低下及び、土石流の発生に伴う斜面中流部での土砂堆積による地表面高度の増加であることが明らかとなり、対象地における石礫型土石流の発生状況を示すことができた。今回明らかになった土砂移動分布及び、現地で採取した土質試料から得られた各種パラメータ(平均粒径、内部摩擦角等)は、土石流の再現解析や安定計算等を通した土砂移動プロセスの解明等につながり、今後の災害対策に資する重要な知見と言える。
本研究では、北海道広尾町における土砂・雪崩災害の発生斜面を対象として、2006年7月及び2019年10月に取得された航空レーザー測量による数値地形図の差分解析により地形変化箇所を抽出し、抽出された地形変化箇所における詳細な地形地質調査及び土質試料の採集・試験を行なうことで、対象地域における土砂移動分布及びその移動形態について検討した。
2時期の航空レーザー測量による数値地形図の比較の結果、対象地域内の5つの渓流の内、一つで上流部での地表面高度の最大4.5 mの減少、中流部での地表面高度の最大4.8 m増加が検出された。以上の地域における標高差分検出域における現地調査の結果、上流部では斜面の崩壊跡とその下部の崖錐が確認でき、横断面形状はV字型を呈する。一方、中流部の谷底は広がった凹型を呈しており、礫支持で崩れやすい堆積物が表面を覆っていた。これらの堆積物は斜面傾斜方向に伸びるローブ状の地形を呈しており、先端に人頭大の大礫を含み、表面は拳大の大礫で覆われ、内部は2〜10 cm程度の礫支持で木片も含んでいた。以上の特徴は石礫型土石流の特徴と一致する。また、標高の異なる3地点で採取した土質試料の内部摩擦角は斜面最下部で若干大きい傾向にあるが、粒度組成や含水比に3試料間で大きな違いは見受けられなかった。そのため、当該斜面における堆積物は比較的均質な物理特性を持つと判断できる。
以上の検討結果、数値地形図の標高差分により抽出された地形変化箇所は、航空レーザー測量による地形データ取得が行われた2006年7月以降2019年10月までの13年の間に発生した斜面上流部の崩壊による地表面高度の低下及び、土石流の発生に伴う斜面中流部での土砂堆積による地表面高度の増加であることが明らかとなり、対象地における石礫型土石流の発生状況を示すことができた。今回明らかになった土砂移動分布及び、現地で採取した土質試料から得られた各種パラメータ(平均粒径、内部摩擦角等)は、土石流の再現解析や安定計算等を通した土砂移動プロセスの解明等につながり、今後の災害対策に資する重要な知見と言える。