日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG23] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2024年5月28日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:菊地 一輝(中央大学 理工学部)、池田 昌之(東京大学)、川村 喜一郎(山口大学)、清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)

17:15 〜 18:45

[HCG23-P09] インダスモラッセにおける古土壌の変遷

*吉田 孝紀1杉山 春来2、Das Supriyo Kumar3 (1.信州大学理学部理学科地球学コース、2.信州大学大学院総合理工学研究科、3.プレジデンシー大学)

キーワード:モラッセ、古風化、古土壌

インドとユーラシアの衝突の過程で、アジア南縁の隆起と侵食に伴って生産された堆積物は,「インダスモラッセ」と呼ばれる粗粒な堆積物として知られている[1, 2].北西インドに分布するIndus 層群はインダスモラッセに相当する地層で[1],ヒマラヤ山脈成立に関わる環境変化を記録していると考えられる.近年,この地層中から漸新世のU-Pb年代年代を示す砕屑性ジルコンが報告され,その堆積が漸新世後期以降に及ぶことが示されている[3].
一方,古土壌はその当時の気候条件を良く反映するため,その検討は陸上域における堆積環境の復元手法として有用である.北西インド,Ladakh地域にはIndus 層群が模式的に露出し,多数の古土壌層準が認められる.今回,Ladakh南東部のインダス川沿いに露出する,Indus 層群のNurila 層とNimu 層 [4]の古土壌を記載し,その堆積環境について報告する.
Nurla層は暁新統の有孔虫石灰岩に乗る陸成層で,層厚700m以上に及び [4],主に粗粒砂岩のユニットと雑色の砂岩泥岩互層からなる.時に泥質岩の卓越層を挟む.泥質岩は主に緑色,赤紫色,赤色を呈し,まれに暗緑色を示す.古土壌が頻繁に挟まれ,長さ30cmを超える根痕,炭酸塩ノジュール(カリチ)を含み,土層分化が明瞭である.粘土鉱物に富む細粒層が認められ,Alfisols, Ultisols, Oxisols に相当する.地下水によるグライ化を被った古土壌も認められる.
Nimu層はIndus Groupの最上部を占める地層であるが堆積年代は不鮮明である.層厚は600m以上に達し [4],主に粗粒~中粒砂岩のユニットと雑色砂岩泥岩互層,雑色の泥質岩から構成される.泥質岩は主に緑灰色,赤色を呈するが黒色,灰緑色のものも多い.カリチに乏しく,菱鉄鉱の微小ノジュールを含むことが多い.グライ化している場合が多いが,古土壌は土層分化が明瞭であり,大型生痕や炭酸塩ノジュールに覆われた根痕を伴う.鉄鉱物が濃集した薄層を伴うことがある.Inceptisols, Oxisols, Spodosolsに相当する.
Nurla層からNimu層での古土壌層変化は,やや乾燥した環境下における古い草地・森林土壌から,より湿潤な環境下における,季節性に富んだ環境で形成された,やや若い草地・森林土壌の構成への変化と考えることができる.古土壌中の排水性の変化が堆積時の地形環境の変化によるのか,地下水位の変動幅の広さに起因するのか,今後検討が必要である.

引用文献
[1] Searle et al., 1990, Tectonophysics, 174, 301-314, [2]Brookfield and Andrews-Speed, 1984, Sed. Geol, 40, 287-291, [3] Zhou et al., 2020, Jour. Geol. Soc., 177, 818-815. [4] Sinclair and Jaffey, 2001, Jour. Geol. Soc., 158, 151-162.