日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS08] 地すべりおよび関連現象

2024年5月31日(金) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:王 功輝(京都大学防災研究所)、千木良 雅弘(公益財団法人 深田地質研究所)、今泉 文寿(静岡大学農学部)、齋藤 仁(名古屋大学 大学院環境学研究科)

17:15 〜 18:45

[HDS08-P03] 2023年6月豪雨による九州北部の斜面崩壊地の地質学的検討

*阿部 朋弥1斎藤 眞1星住 英夫1宮地 良典1川畑 大作1村岡 やよい1、阪口 圭一1、土志田 正二2、楠本 岳志3 (1.産業技術総合研究所 地質調査総合センター、2.消防庁 消防研究センター、3.農業・食品産業総合研究機構)

キーワード:斜面崩壊、地質学的背景、2023年6月豪雨、九州北部

2023年6月下旬から7月中旬にかけて, 梅雨前線の停滞による豪雨の影響で, 九州北部で広域的な斜面災害が発生した. 産総研地質調査総合センターは, 消防庁消防研究センター及び農業・食品産業技術総合研究機構と共に, 九州北部地域の斜面崩壊地について現地調査を実施し, 崩壊地と地質の関係を確認したため, これを報告する.
調査期間と調査範囲は次の通りである.
2023年8月1~4日: 大分県由布市・日田市・福岡県東峰村・宮崎県高千穂町及び熊本県益城町
2023年8月27~29日: 福岡県久留米市・佐賀県唐津市
今回調査した崩壊地は, A)熱水変質や風化変質により岩石が脆くなることで崩壊した地域(由布市湯布院町川西・東峰村小石原鼓・高千穂町坂ノ下・益城町赤井・久留米市田主丸町竹野・唐津市浜玉町平原)と, B)基盤岩(火山岩)を被覆する表層堆積物が崩壊した地域(日田市小野・鶴河内)の2つのタイプに大きく区分される.
A)タイプの事例を地域ごとに紹介する. 由布市湯布院町川西では, 熱水変質を受けた安山岩溶岩・火砕岩(川西安山岩,前期更新世)が崩壊していた. 久留米市田主丸町竹野では, 白亜紀の花崗岩類による接触変成作用を受けた泥質片岩(周防変成岩類, 後期三畳紀〜前期ジュラ紀)が崩壊していた. 唐津市浜玉町平原では, 糸島花崗閃緑岩(白亜紀)のコアストーンの崩落が顕著であった地域と,深江花崗岩(白亜紀)の真砂の崩壊・流出が顕著な地域が存在した. 高千穂町坂ノ下では, 風化による粘土化が進んだ非溶結の火砕流堆積物(阿蘇4火砕流堆積物, 後期更新世), 益城町赤井では風化による粘土化が進んだ安山岩のスコリア丘(赤井火山, 中期更新世後半), 東峰村小石原鼓では, 風化により真砂化した花崗岩類(白亜紀)が崩壊していた.
B)タイプの日田市小野・鶴河内では, 安山岩溶岩と固結した火砕岩(山国層, 後期中新世~鮮新世)の表層を同質の岩屑堆積物が厚く覆っており, その岩屑堆積物が崩壊していた.
このように, 今回の崩壊は, 地質ごとに異なっていた.特に, 接触変成による地質の変化や, 熱水変質や風化, 断層活動による岩石の脆弱化, 岩石を被覆する表層堆積物の厚さなどの詳細な地質情報が, 今後の斜面災害のリスク評価において重要であることが示唆された.