17:15 〜 18:45
[HDS08-P08] ドローン磁気探査による熱水変質地域の調査－斜面災害リスク評価への適用－
キーワード：ドローン磁気探査、熱水変質、粘土、吉岡地域、阿蘇火山、斜面災害リスク
斜面を構成する地質は，変質し粘土化することにより強度が低下することに伴い斜面災害のリスクが高まることが知られている．火山地域においては，熱水変質作用において火山岩が変質を受け粘土化するが，粘土は磁化強度が弱いことから磁気探査により熱水変質地域を調査することが可能と考えられる．そこで，本研究では斜面災害のリスク評価を行うため，先行実施した既存の空中磁気異常データの解析による阿蘇火山西麓の熱水変質地域の事例研究（大熊ほか，2023a）に引き続いて，同吉岡地域においてドローンを使用した新規の超高空間分解能な空中磁気探査を実施した（大熊ほか，2023b）．この結果について報告する．
阿蘇火山西麓地域では国土交通省九州地方整備局九州技術事務所により有人ヘリコプターを使用した空中電磁・磁気探査が実施され（国土交通省九州地方整備局九州技術事務所，2014），空中電磁データから，湯ノ谷，吉岡，地獄・垂玉などの噴気・温泉地域の地下浅部では低比抵抗構造が解析されている．一方，大熊ほか（2023a）は当該の調査の空中磁気データの処理・解析から3次元磁化構造を求めて，前述の噴気・温泉地域がいずれも顕著な低磁化強度域となり，熱水変質帯に良く対応することを示した．
この結果を受け，より詳細な対応関係を見るために，2023年3月に阿蘇火山西麓の吉岡地域でドローン空中磁気探査を実施した（大熊ほか，2023b）．調査に使用した磁力計は，ドローン専用に開発されたMagArrowと呼ばれる空中磁力計で1 kHzの高周波数で測定が行える（大熊，2021）．また，GNSS受信機とIMU（慣性計測装置）を内蔵するにもかかわらず，重量が 1 kgと軽量で長さが1 mの空気力学に基づいた形状をしている．この磁力計を使用して事前にドローン（DJI Matrice 600 Pro）がもたらすノイズの大きさを確認したところ，2 m以内に近づくと数 nT以上の影響があることが分かったため，調査飛行の際はドローンから約 3 m 下方にMagArrowを吊り下げて観測を実施した．調査範囲は500 m四方で，測線間隔は，主測線25 m（南北），交差測線100 m（東西）と設定し，対地高度は25 mで調査飛行を行った．ただし，調査地域の長野牧野崖下の凹地内では噴気に加えて植生も豊富なため，安全を考慮して飛行高度を計画よりも上げて飛行している．
その後調査飛行により取得できたデータを産業技術総合研究所の空中磁気データ処理手順（中塚，2016）に従い処理を行い磁気図の編集を行った．その結果，現在の噴気地帯がその北西部に位置する長野牧野崖下凹地内では，低磁気異常が卓越して分布するのが分かった．また，噴気地帯の北部には草千里ヶ浜溶結凝灰岩からなる落差が約50m程度の崖が東西方向に連なっており，崖部付近に高磁気異常が分布することが分かった．
磁気異常は崖部付近の地形の影響を受けていることから，詳細DEM（国土交通省九州地方整備局熊本復興事務所，2019）を使用して全磁力異常の地形補正を行ったのち，極磁力異常を求めたところ，崖部付近が崖部上端の緩傾斜の地形面と比べ磁気異常が高いことがわかった．また，崖部上端の緩傾斜の地形面の磁気異常も一様ではなく，2016年の熊本地震等による斜面災害発生箇所付近の源頭部では振幅が低下している箇所も確認できた．
本発表では，磁気異常分布の詳細と3次元磁気イメージングから得られた磁化構造と熱水変質が進行している噴気・温泉地帯との比較・検討結果について述べる．
謝辞
ドローン空中磁気探査の実施に際し，長野牧野組合の長野浩之組合長に便宜を図っていただいた．国土交通省九州地方整備局九州技術事務所には，阿蘇火山地域における空中電磁・磁気探査データの使用に関し便宜を図っていただいた．同省同局熊本復興事務所には，阿蘇火山地域の詳細DEMデータの使用に関し便宜を図っていただいた．ここに記して感謝申し上げます．
阿蘇火山西麓地域では国土交通省九州地方整備局九州技術事務所により有人ヘリコプターを使用した空中電磁・磁気探査が実施され（国土交通省九州地方整備局九州技術事務所，2014），空中電磁データから，湯ノ谷，吉岡，地獄・垂玉などの噴気・温泉地域の地下浅部では低比抵抗構造が解析されている．一方，大熊ほか（2023a）は当該の調査の空中磁気データの処理・解析から3次元磁化構造を求めて，前述の噴気・温泉地域がいずれも顕著な低磁化強度域となり，熱水変質帯に良く対応することを示した．
この結果を受け，より詳細な対応関係を見るために，2023年3月に阿蘇火山西麓の吉岡地域でドローン空中磁気探査を実施した（大熊ほか，2023b）．調査に使用した磁力計は，ドローン専用に開発されたMagArrowと呼ばれる空中磁力計で1 kHzの高周波数で測定が行える（大熊，2021）．また，GNSS受信機とIMU（慣性計測装置）を内蔵するにもかかわらず，重量が 1 kgと軽量で長さが1 mの空気力学に基づいた形状をしている．この磁力計を使用して事前にドローン（DJI Matrice 600 Pro）がもたらすノイズの大きさを確認したところ，2 m以内に近づくと数 nT以上の影響があることが分かったため，調査飛行の際はドローンから約 3 m 下方にMagArrowを吊り下げて観測を実施した．調査範囲は500 m四方で，測線間隔は，主測線25 m（南北），交差測線100 m（東西）と設定し，対地高度は25 mで調査飛行を行った．ただし，調査地域の長野牧野崖下の凹地内では噴気に加えて植生も豊富なため，安全を考慮して飛行高度を計画よりも上げて飛行している．
その後調査飛行により取得できたデータを産業技術総合研究所の空中磁気データ処理手順（中塚，2016）に従い処理を行い磁気図の編集を行った．その結果，現在の噴気地帯がその北西部に位置する長野牧野崖下凹地内では，低磁気異常が卓越して分布するのが分かった．また，噴気地帯の北部には草千里ヶ浜溶結凝灰岩からなる落差が約50m程度の崖が東西方向に連なっており，崖部付近に高磁気異常が分布することが分かった．
磁気異常は崖部付近の地形の影響を受けていることから，詳細DEM（国土交通省九州地方整備局熊本復興事務所，2019）を使用して全磁力異常の地形補正を行ったのち，極磁力異常を求めたところ，崖部付近が崖部上端の緩傾斜の地形面と比べ磁気異常が高いことがわかった．また，崖部上端の緩傾斜の地形面の磁気異常も一様ではなく，2016年の熊本地震等による斜面災害発生箇所付近の源頭部では振幅が低下している箇所も確認できた．
本発表では，磁気異常分布の詳細と3次元磁気イメージングから得られた磁化構造と熱水変質が進行している噴気・温泉地帯との比較・検討結果について述べる．
謝辞
ドローン空中磁気探査の実施に際し，長野牧野組合の長野浩之組合長に便宜を図っていただいた．国土交通省九州地方整備局九州技術事務所には，阿蘇火山地域における空中電磁・磁気探査データの使用に関し便宜を図っていただいた．同省同局熊本復興事務所には，阿蘇火山地域の詳細DEMデータの使用に関し便宜を図っていただいた．ここに記して感謝申し上げます．