日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS09] 人間環境と災害リスク

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:佐藤 浩(日本大学文理学部)、畑山 満則(京都大学防災研究所)、中埜 貴元(国土交通省国土地理院)

17:15 〜 18:45

[HDS09-P15] トラス橋モデルの損傷推定シミュレーションに対する機械学習モデル構築

*竿本 英貴1、宮本 崇2 (1.産業技術総合研究所、2.山梨大学)

キーワード:機械学習、橋梁、有限要素法、サロゲートモデル、損傷推定

橋梁や避難場所建屋等のインフラ構造物を健全に保守しておくことは,被災後の物資輸送計画や避難計画を策定する上で極めて重要である.一方で,インフラ構造物の老朽化および人口減少のため,インフラ構造物の維持管理のためのコストが将来的に増加することが問題となっている.この問題に対し,IoT技術とシミュレーション技術に基づくデジタルツインをインフラ構造物について構築しておくことで維持管理コストを低減する方針が提示されている[1].例えば,劣化状況をシミュレーションを通じて把握することにより,劣化程度の大きい箇所から優先的に点検・補修を実施すること等が想定されている [1].

 このような背景に対し,機械学習を用いた施設の維持管理や損傷推定解析は省人化・高速化の点で有効と考えられており,コンクリートのひび割れや変状の検出 [2] [3] [4],橋梁損傷部材の損傷度の判定[5] など,様々な課題に機械学習が用いられてきている.土木分野では機械学習モデルを作成するための教師データは実測結果や実験から得られることが多いが,教師データの分量・精度が十分とは限らないことなど,高精度な機械学習モデルの構築には教師データ準備の観点での課題がある.著者らは,教師データの分量と精度の両水準を満たす方策としてシミュレーション結果を用いることを想定し,橋梁の損傷推定調査を模擬した有限要素解析(COMSOL Multiphysicsを使用)を様々なケース(36万通り)について実施することで部材の損傷状況と変位分布に関する大量のデータを作成している[6].一般に,有限要素解析等のシミュレーションに比べ,機械学習モデルの解析時間は大幅に短い.したがって,[6]で作成したシミュレーション結果を教師データとして学習させた機械学習モデルは,高速にシミュレーション結果の近似値を出力することができる(サロゲートモデル).また,機械学習モデルは高性能な計算機資源でなくとも動作することが期待できるため,機械学習モデルを用いることで現場作業中に損傷推定解析を実施することができるようになり,結果として省力化・省人化に寄与するものと考える.

 ここでは,(1) 文献[6]で作成した荷重入力-変位出力関係を教師データとする機械学習モデルを構築すること,(2) 構築した機械学習モデルがどの程度の精度を有するのか明らかにすることを目的とする.なお,機械学習モデルの構築には,自動機械学習ライブラリを援用することで自動化・省力化を図っている.現時点では,垂直材が損傷した場合に対する推定精度が相対的に低い結果となっている.これは変位分布に対する垂直材の寄与が相対的に小さいためと考えている.

参考文献

[1] 東京都:デジタルツインの社会実装に向けたロードマップ, https://info.tokyo-digitaltwin.metro.tokyo.lg.jp/roadmap/, 2022. (2024/02/01 参照)

[2] 全邦釘, 井後敦史: Random Forest によるコンクリート表面ひび割れの検出, 土木学会論文集 F3, Vol.71, No.2,pp.I 1–I 8, 2015.

[3] 横山傑,松本高志:Deep Learning によるコンクリートの 変状自動検出器の開発と Web システムの実装, 土木学会論文集 A2 (応用力学) , Vol73, No.2, pp.I 781–I 789, 2017.

[4] 青島亘佐, 中野聡, 徳永皓平, 中村秀明: 深層学習による異常検知手法を用いたコンクリート表面の変状検出, 土木学会論文集 A2 (応用力学) , Vol.75, No.2, pp.I 559-I 570, 2019.

[5] 鈴木達也, 西尾真由子: 橋梁定期点検における部材損傷度判定への深層学習の適用に関する検討, 土木学会論文集F3(土木情報学), Vol.75, No.1, pp.48–59, 2019.

[6] 竿本英貴, 宮本崇:機械学習による橋梁の損傷推定を想定した教師データセットの生成,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.78,No.4,pp.I_10-I_21,2022.