[H-GM03] 地形

[HGM03-04] 隆起山地の長期的な地形発達史の復元: 土砂給源域と堆積域の宇宙線生成核種分析に基づく検証

★招待講演

*太田 義将^1,2、松四 雄騎³、松崎 浩之⁴ (1.京都大学理学研究科、2.日本学術振興会特別研究員DC、3.京都大学防災研究所、4.東京大学総合研究博物館)

キーワード：地形発達モデル、宇宙線生成核種、ネオテクトニクス、変動地形、河川縦断形

テクトニックな外部強制力の影響を受けた地形変化を定式化することは，山地の地形発達履歴を解明し予測する上で重要である．それには山地流域における侵食環境の変遷と時間スケールに関する定量的な理解が必要である．河川の形態は隆起速度の変化に対す応答を示すものとして，従来モデリングと地形発達過程の復元がおこなわれてきた．モデルに基づく理論的な説明は，定量的な証拠によって検証される必要があるが，現在まで十分におこなわれていない．そこで本研究では堆積域における深層ボーリングコア中の宇宙線生成核種に着目した．本研究では研究対象地として近畿三角帯西辺に位置する第四紀後期に隆起した六甲山地と比良山地の組み合わせを選定した．両山地には複数の遷急点がみられ，本研究の地形解析結果は過去の隆起速度の増加イベントを示唆する．¹⁰Be分析の結果，山地山上部における流域平均侵食速度は，侵食基準面を規定する断層に接した流域に比べて1オーダー程度小さいことが明らかとなった．また両山地の堆積域で掘削された深層ボーリングコアの¹⁰Be濃度は山地の隆起開始時期から現在に向かって明瞭に減少する傾向を示した．これらの結果は，両山地が第四紀後期の隆起速度の増大に対応して成立した過渡的な地形であることを証明している．一般的な侵食モデルを用いて河川縦断面形を逆解析し，地形発達の履歴を復元した結果，過去の流域が有する時系列的な¹⁰Be濃度の計算値は，深層ボーリングコア中の¹⁰Be濃度プロファイルから概ね説明できた．本研究の結果は，地形発達モデルから復元された長期的な地形発達過程を堆積域の宇宙線生成核種から検証可能であることを示している．