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[HQR05-04] 中央アナトリア,カマン・カレホユック遺跡近傍の古沼地堆積物による前期青銅器から鉄器時代の局所的古環境復元
キーワード:カマン・カレホユック、ITRAX、人間活動、中央アナトリア、後期完新世
カマン・カレホユックは中央アナトリアに位置する丘状の遺跡であり,これまでの発掘で4つの文化層(オスマン帝国時代,鉄器時代,後期~中期青銅器時代,前期青銅器時代)が確認されている.前期青銅器時代から鉄器時代に対応する遺構では,大規模な火災を受けた層準(大火災層)が4層見つかっている.大火災層の前後で,建築様式や土器の製作手法等が異なる民族の技法へと変化していることから,異民族の侵入による火災の可能性が示唆されている.当時の民族の移動に寒冷化や乾燥化による環境の悪化が影響を与えたのかといった,人間活動と環境変化の関連性を明らかにするためには,遺跡周辺で局所的な古環境復元を行う必要がある.Kashima (2008)は,カマン・カレホユック遺跡近傍に,4600~1800年前の前期青銅器時代からローマ時代に対応する古沼地堆積物が堆積していることを報告した.この古沼地堆積物を用いてカマン・カレホユック遺跡近傍の局所的古環境復元を行うことにより,遺跡での人間活動の変化と環境変化の関係性を議論することが可能となる.
2023年にカマン・カレホユック遺跡の北縁から約30m北の地点で,可搬式パーカッションピストンコアラーを用いた掘削を行い,深度~5mの堆積物コア(KL23-01)を回収した.年代が既知の堆積物コアとの岩相対比の結果から,KL23-01コアは少なくとも4800年前までをカバーしていると推測した.トルコ鉱物資源調査開発総局(MTA)にてKL23-01コアから分取した試料のXRFコアスキャナー(ITRAX),XRD,WD-WRF分析を行った.
KL23-01の前期青銅器時代~鉄器時代に相当する深度から,CaとSrが高い値を示し,粒度が粗く,炭化物や数cm幅の土器片が複数含まれる層準が4層確認された.遺跡内試料のITRAX分析の結果,遺跡内の灰でもCaとSrが高い値を示した.本研究では,KL23-01のCaとSrの値が高い層準を灰層と定義する.KL23-01の灰層の予測される堆積年代は,遺跡内の4層の大火災層の時期と誤差の範囲内で一致していた.これらの結果から,KL23-01の灰層は,遺跡内での大火災による灰や土器片を含むゴミを人為的に沼地に捨てたことによって堆積した可能性が考えられる.灰層が大火災層と対応する堆積であるならば遺跡内との遺跡近傍の古沼地堆積物の精密な年代対比が可能となり,環境の変化と火災の時期の前後関係を明らかにすることが可能になる.今後,KL23-01コア中の炭化物の放射性炭素年代測定と,微化石,花粉,有機物分析による遺跡周辺の古環境復元を進めていく.
2023年にカマン・カレホユック遺跡の北縁から約30m北の地点で,可搬式パーカッションピストンコアラーを用いた掘削を行い,深度~5mの堆積物コア(KL23-01)を回収した.年代が既知の堆積物コアとの岩相対比の結果から,KL23-01コアは少なくとも4800年前までをカバーしていると推測した.トルコ鉱物資源調査開発総局(MTA)にてKL23-01コアから分取した試料のXRFコアスキャナー(ITRAX),XRD,WD-WRF分析を行った.
KL23-01の前期青銅器時代~鉄器時代に相当する深度から,CaとSrが高い値を示し,粒度が粗く,炭化物や数cm幅の土器片が複数含まれる層準が4層確認された.遺跡内試料のITRAX分析の結果,遺跡内の灰でもCaとSrが高い値を示した.本研究では,KL23-01のCaとSrの値が高い層準を灰層と定義する.KL23-01の灰層の予測される堆積年代は,遺跡内の4層の大火災層の時期と誤差の範囲内で一致していた.これらの結果から,KL23-01の灰層は,遺跡内での大火災による灰や土器片を含むゴミを人為的に沼地に捨てたことによって堆積した可能性が考えられる.灰層が大火災層と対応する堆積であるならば遺跡内との遺跡近傍の古沼地堆積物の精密な年代対比が可能となり,環境の変化と火災の時期の前後関係を明らかにすることが可能になる.今後,KL23-01コア中の炭化物の放射性炭素年代測定と,微化石,花粉,有機物分析による遺跡周辺の古環境復元を進めていく.