日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR05] 第四紀:ヒトと環境系の時系列ダイナミクス

2024年5月30日(木) 09:00 〜 10:30 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:白井 正明(東京都立大学)、横山 祐典(東京大学 大気海洋研究所 )、吾妻 崇(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、里口 保文(滋賀県立琵琶湖博物館)、座長:白井 正明(東京都立大学)、石輪 健樹(国立極地研究所)

10:15 〜 10:30

[HQR05-06] Eski Acigol湖跡の掘削に基づく過去〜5000年間の中央アナトリア古環境変動史

*多田 隆治1鈴木 健太1多田 賢弘1、Küçükarslan Nurcan1、松井 孝典1山田 桂2唐 双寧2香月 興太3、Sayhan Sencer4、松村 公仁5、大村 幸弘5 (1.千葉工業大学地球学研究センター、2.信州大学学術研究院理学系、3.島根大学エスチュアリー研究センター、4.アヒ エブラン大学、5.アナトリア考古学研究所)

キーワード:エスキ・アジュギョル、中央アナトリア、後期完新世、古環境変動

中央アナトリアのほぼ中央には、1970年代に干上がったEski Acigolと呼ばれる火口湖跡があり、過去15000年以上に渡って細粒堆積物が連続的に堆積したことが知られている。私たちは2023年8月23~25日に、Eski Acigol中央部付近のEA-2301地点において、ポータブルな振動式掘削装置を用いて4孔を掘削し、深度〜4.6m(〜5000年前)までの湖成堆積物記録を連続的に復元した。
回収された堆積物は細粒砕屑物を主体とし、様々な程度に石灰質物質(貝形虫殻などの生物源石灰質物質や無機沈殿石灰質物質)やシリカ(珪藻、海綿骨針などの生物源シリカや無機沈殿オパール)を含む。回収された堆積物のうち、特に深度2.4〜4.3m(約5〜3千年前)の層序区間は数10cmスケールの明色層―暗色層互層で特徴づけられ、この期間で6回繰り返していることから~400年の周期をもつと計算される。これら明暗互層の明色部には更に厚さ数cmの様々な程度に赤味や黒味を帯びた薄層が繰り返し、数十年周期でも環境が激しく変動した事を示唆する。
堆積物の顕微鏡観察や色・鉱物・化学分析を予察的に行って、こうした変動の原因を調べた結果、数10cmスケールの明暗互層は、湖水位変動(乾湿変動)を反映している可能性が示唆された。数cmスケールの色の変化について、それがどの様な環境変動を反映しているかについては、今後の課題である。
 上記の~400年周期の乾湿変動が顕著な時代区間は、カマン・カレホユックなどの遺跡において火災層が繰り返し出現する時代区間とほぼ一致し、出現周期も類似していることから両者の間に何らかの関係が示唆される。今後、両者の関係を明らかにするためには、両記録において、より精度が高く時間解像度も高い年代モデルの構築が不可欠である。