日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR05] 第四紀:ヒトと環境系の時系列ダイナミクス

2024年5月30日(木) 10:45 〜 11:45 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:白井 正明(東京都立大学)、横山 祐典(東京大学 大気海洋研究所 )、吾妻 崇(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、里口 保文(滋賀県立琵琶湖博物館)、座長:吾妻 崇(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、横山 祐典(東京大学 大気海洋研究所)

11:30 〜 11:45

[HQR05-10] 首都圏の台地を構成する地層の層相変化に伴う地盤震動特性の変化

*中澤 努1長 郁夫1野々垣 進1 (1.産業技術総合研究所地質調査総合センター)

キーワード:地盤震動特性、更新統、首都圏

首都東京を有する国内最大の平野,関東平野は台地の占める割合が大きいことで知られる.演者らは首都圏の台地の構成層である更新統下総層群木下層や常総層,新期段丘堆積物などの層相の側方変化により地盤震動特性がどのように変化するかをボーリング調査と常時微動観測を実施することにより検討した.
武蔵野台地のMIS 5e面に位置する世田谷区上用賀には,工学的基盤となる上総層群の上位に,木下層(東京層;MIS 5e)下部の軟らかい内湾成泥層が分布し,その上位に木下層上部の内湾成の砂質泥層,そして関東ローム層が累重する.ここでは地盤の共振周波数を示すとされるH/Vスペクトルのピークが1 Hz付近の低周波数帯域に明瞭にみられた.同じくMIS 5e面の世田谷区駒沢では,木下層下部を欠き上総層群の上位に直接木下層上部が累重し,それを覆って関東ローム層が分布する.ここでは3.7 Hzに明瞭なピークがみられた.一方でMIS 5a面に相当する世田谷区野毛町は,木下層下部は分布するが木下層上部は侵食され,新期段丘堆積物とそれを覆って関東ローム層が分布する.ここではH/Vスペクトルに1.4 Hzと4.6 Hzの2つのやや低いピークが認められ,このうち4.6 Hzのピークのほうが比較的明瞭であった.
下総台地のMIS 5c面に位置する流山市西初石付近には,工学的基盤となる下総層群上泉層/清川層の上位に木下層下部の内湾成泥層,木下層上部の内湾成砂泥互層,常総層の河川成砂層,それを覆って関東ローム層が分布する.ここでは1 Hz付近と4〜5 Hzにピークがみられ,このうち1 Hz付近のほうが比較的明瞭であった.同じくMIS 5c面である柏市旭町付近では,木下層下部が分布するのは流山と同様であるが,木下層上部が海成の砂層からなることが異なる.ここでは流山に似て1〜2 Hzと5 Hz付近の両方にいずれも低いピークが認められたが,流山に比べ5 Hz付近のピークが明瞭になった.また木下層下部が分布しない柏市豊住付近では高周波数帯域までフラットに近い特性を示した.
以上をまとめると,まず木下層下部の軟らかい泥層が分布し,その上位も表層の関東ローム層まで粗粒堆積物を挟まない世田谷区上用賀では,1 Hz付近の低周波数帯域に明瞭なピークが認められるなど,台地であるにもかかわらず低地に類似する地盤特性を示した.一方で木下層下部が分布する地域であっても,木下層上部が砂層である場合,あるいは河川成の常総層/新期段丘堆積物が厚く分布する場合はピークが2つに分かれ,いずれのピークもやや不明瞭になった.また未固結の下総層群下部層を基盤とするよりも,固結した上総層群を基盤とする場合のほうがH/Vスペクトルのピークが明瞭であった.すなわち首都圏の台地部の地盤震動特性は,1)木下層下部の谷埋め堆積物の有無・層厚,2)表層部の段丘堆積物の層相,そして3)基盤の層相,これら3つの地質学的要素の影響を強く受け,側方に大きく変化することが明らかになった.