17:15 〜 18:45
[HQR05-P12] 阿武川―佐波川の河川争奪,佐波川上流域における地形発達史

キーワード:河川争奪、地形発達史、河成段丘、Aso-4 火砕流堆積物
中国山地西部,阿武川―佐波川の河川争奪は中位段丘面(M面)の段丘化と関連づけられて説明され,その年代は阿武川流域に分布するAso-4(阿蘇4,86 ka)(市村ほか1996),Aso-3(阿蘇3,133 ka)(相山ほか2022)から130〜85 ka頃とされている(山内・白石2014).しかし,争奪の肘に近く,M面より下位の段丘(Ls1面)からAso-4火砕流堆積物が発見された(辻ほか2022)ことから,河川争奪の年代は制約されるはずである.しかし,これまでの研究では佐波川上流から下流,朴川(阿武川支流)を含めた統一的な地形発達史は議論されていない.そこで,本研究では地理的,地質学的調査に基づき,本地域の地形発達史を論じる.
佐波川上流域においてM面(Mα面,Mβ面),Ls1面,Ls2面,Ls3面,Lc面に,朴川沿い(阿武川流域)において,M面(Mα面),La1面,La2面に区分した.Mβ面は佐波川河床との比高約40 mをもつ.Mα面は標高320〜330 m付近に分布し,谷中分水界(標高328 m)に近い.Mα面はMβ面と比較して堆積物が厚く,主に基質支持の円礫層で構成される.Ls1面では,Aso-4火砕流堆積物下位に円礫層,上位に支流性の角礫を含む亜円〜角礫層が認められ,それを覆う土壌層にはAT(姶良―Tn,30 ka)が狭在する.Aso-4火砕流堆積物とATはほぼ同標高に分布する.長者ヶ原下流,Lc面は,長者ヶ原(165 ka,基底標高 170 m程度)より下流,争奪の肘から約7 km下流に分布し,本火山起源であると考えられる安山岩礫で構成される崩壊性堆積物が認められた.
以上より,次の知見が得られた.
・河川争奪の年代はAso-4火砕流の到達以前である.
・Ls1面(標高275 m)において,Aso-4火砕流の到達以前〜ATの降下以前の期間では河床高度が停滞していた.その要因として,長者ヶ原の形成による堰き止めが考えられる.また,ATの降下以前において,堰き止めていた溶岩が決壊し,現在の佐波川の河床高度まで下刻された可能性が考えられる.
・河川争奪前において,争奪の肘と長者ヶ原の基底から,古佐波川,争奪の肘より下流で極端な地形的障害を考える必要がある.
佐波川上流域においてM面(Mα面,Mβ面),Ls1面,Ls2面,Ls3面,Lc面に,朴川沿い(阿武川流域)において,M面(Mα面),La1面,La2面に区分した.Mβ面は佐波川河床との比高約40 mをもつ.Mα面は標高320〜330 m付近に分布し,谷中分水界(標高328 m)に近い.Mα面はMβ面と比較して堆積物が厚く,主に基質支持の円礫層で構成される.Ls1面では,Aso-4火砕流堆積物下位に円礫層,上位に支流性の角礫を含む亜円〜角礫層が認められ,それを覆う土壌層にはAT(姶良―Tn,30 ka)が狭在する.Aso-4火砕流堆積物とATはほぼ同標高に分布する.長者ヶ原下流,Lc面は,長者ヶ原(165 ka,基底標高 170 m程度)より下流,争奪の肘から約7 km下流に分布し,本火山起源であると考えられる安山岩礫で構成される崩壊性堆積物が認められた.
以上より,次の知見が得られた.
・河川争奪の年代はAso-4火砕流の到達以前である.
・Ls1面(標高275 m)において,Aso-4火砕流の到達以前〜ATの降下以前の期間では河床高度が停滞していた.その要因として,長者ヶ原の形成による堰き止めが考えられる.また,ATの降下以前において,堰き止めていた溶岩が決壊し,現在の佐波川の河床高度まで下刻された可能性が考えられる.
・河川争奪前において,争奪の肘と長者ヶ原の基底から,古佐波川,争奪の肘より下流で極端な地形的障害を考える必要がある.