日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR06] 地球惑星科学へのルミネッセンス・ESR年代測定の応用

2024年5月30日(木) 15:30 〜 16:45 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:田村 亨(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、豊田 新(岡山理科大学古生物学・年代学研究センター)、小形 学(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構東濃地科学センター)、座長:田村 亨(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、豊田 新(岡山理科大学古生物学・年代学研究センター)

16:15 〜 16:30

[HQR06-04] 鹿島灘海岸における長石砂の残存ルミネッセンスと土砂移動

*小森 康太郎1,2田村 亨2,1 (1.東京大学大学院新領域創成科学研究科、2.産業技術総合研究所地質調査総合センター)

キーワード:光ルミネッセンス、土砂移動、鹿島灘

現世の堆積物に残存しているルミネッセンス信号による残存線量は,土砂の運搬過程の露光状況を反映しており,堆積と移動を繰り返す土砂の移動履歴の手がかりになる.海岸システムにおいても,ルミネッセンスによる土砂移動の検討の有効性は示されてきている.一方で,既存の研究では土砂の流入や流出が明瞭な海岸を扱ったものが多く,比較的平衡状態にある海岸を取り上げた事例は少ない.そこで本研究では,比較的安定した海岸である鹿島灘の砂浜で採取された表層堆積物の残存線量を評価して,土砂移動の検討を行った.残存線量の評価は,試料から抽出したカリ長石を多く含む直径180-250 µmの粒子の赤外光ルミネッセンス(IRSLとpIRIR)の測定により行った.
鹿島港よりも南側の海岸においては,残存線量が沿岸方向に北から南へ減少する傾向が認められた.pIRIR50/290では約15 Gyから8 Gyへ減少している.このことから南向きの土砂移動が示唆される.また,一般に河川から流入する土砂の残存線量は高いため,鹿島灘南部の海岸では南端に位置する利根川河口からの直径180-250 µmの土砂の流入が小規模であると推測される.鹿島港から北方の大洗までの海岸では,残存線量は北端の大洗サンビーチで最も高い.pIRIR50/290は大洗サンビーチでの約15 Gyから南向きに減少するが,大洋海岸付近で9 Gy前後になり,さらに鹿島港までは南向きの傾向がはっきりとしない.また,鹿島灘の北に那珂川河口南側の海岸では,残存線量がpIRIR50/290で約18 Gyと高い.この高い線量の土砂が大洗漁港を回り込んで大洗サンビーチに流入し,さらに大洋海岸までの南向きの漂砂が示唆される.