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[HSC07-P11] 海洋生物影響データベースによるCO2の致死および亜致死影響の特徴
キーワード:海底下CO2貯留、生物影響、pCO2
海底下CO2地中貯留においては、CO2漏出を仮定した潜在的環境影響評価を実施することが求められている。このためには、海洋生物にCO2の増加がどのような影響を及ぼすのか、その影響を推定するための情報が必要である。日本周辺には黒潮などの暖流と親潮などの寒流が存在する。暖流と寒流では水温、塩分や総アルカリ度などが異なり、その結果として生物影響の要因である海水中の二酸化炭素分圧(pCO2)が地域により異なってくる。また、暖流と寒流では生息する生物組成が異なるため、CO2貯留地点に応じて生物影響の情報を整理することが求められる。そこで、寒冷域から熱帯域にかけての生物へのCO2影響の文献から各種影響データを収集し、生物影響データベースを取りまとめてきた。致死データについてはpCO2と曝露時間の関係で表現される。また、亜致死データについては観察項目が多様にわたるため、成長、代謝、呼吸、石灰化、変態、奇形、増殖、世代などの大項目に分類した。また、異なる項目間での比較を試みるために相対的な指標(LnRR、Hedges’d)を求めた。これまでに致死データは150レコード、亜致死データについては1900余りのレコードを収集できた。本発表では、これまでに収集したデータを整理、致死、亜致死の特徴について報告する。一方、これらの情報をまとめることは、社会受容性の視点からも有用である。一般市民はCCS事業の事例を知らない場合が多い。環境影響評価が実施されることは、その事業にはリスクが存在するのではないかと市民が考えてしまう場合もありうるさらに、一般市民はリスク評価という考えに慣れていないため、漏出するリスクの確率が非常に小さいにもかかわらず、漏出時の影響評価が実施されていることだけで一般市民はCCSの安全性に対する懸念を抱きがちになる。CO2による生物影響情報を提供することは、一般市民が地球温暖化対策の重要性への理解を深めるとともに、一般市民が潜在的環境影響評価の内容を適切に判断する一助になると考えられる。
