日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT14] 高精細地形表層情報と人新世におけるコネクティビティ

2024年5月28日(火) 15:30 〜 16:45 202 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:早川 裕弌(北海道大学地球環境科学研究院)、Gomez Christopher(神戸大学 海事科学部 海域火山リスク科学研究室)、笠井 美青(北海道大学大学院農学研究院)、小倉 拓郎(兵庫教育大学学校教育研究科)、座長:Gomez Christopher(神戸大学 海事科学部 海域火山リスク科学研究室)、小倉 拓郎(兵庫教育大学学校教育研究科)、笠井 美青(北海道大学大学院農学研究院)、早川 裕弌(北海道大学地球環境科学研究院)


16:15 〜 16:30

[HTT14-04] LiDAR技術を用いた琉球列島におけるマングローブ林の地形・分布比較

*笠井 克己1後藤 和久1柳澤 英明2 (1.東京大学、2.東北学院大学教養学部)

キーワード:マングローブ、LiDAR、ALS、MLS

熱帯・亜熱帯の潮間帯に生息する植物であるマングローブは独自の生態系を持つことで知られる.また,マングローブ林は陸と海の緩衝域に一般的に分布し,グリーンインフラとしての役割も期待されている.しかし,その分布特性は十分に明らかにされておらず,適切な保全・植林活動が行えずに枯死し,失敗に終わったケースが多く報告されている(Lewis, 2005).これは,マングローブの生息環境を規定している微地形と堆積環境の把握が困難だったためである(Pham et al., 2018).実際に,マングローブは地表に根が張り出していること,満潮時には水面下に位置してしまうこと,密集した状態で存在している場合が多いことなどから,地形を測量しにくい環境下にある(Ellison, 2022).そのため,広範囲の高精度地形データを得た事例は世界的にも少ない.本研究では,琉球列島に分布している複数のマングローブ林を対象とし,分布と地形を広域で定量的推定し,マングローブ林の分布と地形との関係性を定量的に検討することを目的とする.マングローブ林内の地形を把握する方法として,LiDAR技術を適用した.LiDARは,短時間で膨大かつ高精度の点群データを取得し,地形を直接的に測量できる.しかし,マングローブ林のLiDAR測量事例はまだ事例が少なく,手法の開発・改良段階にある.本研究では,琉球列島に分布する複数のマングローブ林を対象として,ドローンを用いた上空からの測量(ALS)と,林内を踏査できる場合はバックパック型やハンディタイプの機器を用いた林内からの測量(MLS)を行った.測量で得た点群データを用い,数値標高モデル(DEM)や数値表層モデル(DSM),数値樹冠高モデル(DCHM)を高解像度で作成し,マングローブの分布や生息標高範囲の違いなどを定量的に比較し,地形解析と共に,標高に基づく潮汐氾濫の影響や樹木分布を考察した.また,過去の空中写真とUAVを用いて作成したオルソ画像とを比較することで,マングローブ分布範囲の変化と地形,および海面上昇との関係を考察した.複数のマングローブ林を広域で比較した結果,地形や樹高には地域差が認められ,過去と比べた分布範囲の変遷方向も,地域により異なることがわかった.これらは,地域によってのマングローブ成立年代の違いや樹種の違いを反映していると考えられる.