日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT16] 環境トレーサビリティ手法の開発と適用

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、SHIN Ki-Cheol(総合地球環境学研究所)、谷水 雅治(関西学院大学)

17:15 〜 18:45

[HTT16-P02] 降水の酸素・水素安定同位体比と後方流跡線解析による京都府京田辺市の降水をもたらす水蒸気の起源解析

王 沢宇1、*横尾 頼子2 (1.同志社大学理工学研究科、2.同志社大学理工学部)

キーワード:降水、酸素・水素同位体、後方流跡線解析

降水は地表の淡水の大切な水源の一つとして,生態系環境と都市の発展に影響を与えるため,世界的に降水パターンが変化している中で,降水となる水蒸気の起源を明らかにすることが必要である.本研究では,京都府京田辺市における降水の酸素・水素安定同位体比と後方流跡線の時空間変動を調べ,降水をもたらす水蒸気の起源と水蒸気が発生する時の蒸発過程を明らかにするために,2019年7月から2021年2月までと2022年6月から2023年10月まで,1ヵ月ごとに採取した降水の酸素・水素安定同位体比を測定した.また,降水時の空気塊の起源を可視化するために,HYSPLITモデルを用い,2019年10月から2020年10月と2022年10月から2023年10月まで,850hpaにおける後方流跡線を作成し,月ごとにクラスタリングした.
月別の降水量は6月から10月に多く,11月から2月に少なかった.年平均降水量に増加傾向がみられ,日降水量が100 mm以上の日数も増えた.年平均気温は1985年の13.4℃から2022年には16.3℃に上り,温暖化が進んでいる.2019年7月から2023年10月まで,春季における月平均気温は明らかに上昇した.
降水の酸素・水素安定同位体比の時系列変化から,2022年6月から2023年10月までにおけるδ18O,δ2H は,2019年7月から2021年2月までよりも,変動の幅が小さくなった.また,2019年8月,2020年6月と7月,2022年8月および2023年4月を除き,降水が多いほど軽くなるという雨量との相関関係がみられたが,気温との関係や季節変化はみられなかった.
降水をもたらす水蒸気の起源について,後方流跡線および測定した降水のδ18O,δ2Hから求めたd-excess値の変化から,冬季に大陸からの寒冷で乾燥した気流の影響を受け,日本の西側の黄海,東シナ海と日本海の海水が急速に蒸発し,d-excess値の高い降水が京田辺市にもたらされている.夏季には東南アジア海域および太平洋からの温暖で湿潤な気流の影響を受け,日本の西側と南西側の海域および太平洋の海水が緩やかに蒸発し,この時期に京田辺市に入る降水のd-excess値はより小さく,10‰に近くなることがわかった.