17:15 〜 18:45
[HTT16-P06] イングランド南西部・上部ペルム系コンクリーションの地球化学的特徴
キーワード:球状コンクリーション、元素移動、酸化還元フロント
イングランド南部デヴォン海岸に露出する上部ペルム系 Littleham Mudstone 累層は、赤色泥岩中に酸性流体で脱色された白色スポットによって特徴づけられる(Yoshida et al. 2014)。その白色スポット中央部には、VやUに富む暗灰色のコンクリーションが分布し、その見た目から”フィッシュアイ”型コンクリーションと呼ばれている。本研究では、コンクリーション内部に見られる金属・半金属を中心とした元素分布とその成因を解明するため、地球化学的分析を行った。
研究試料は直径約40 mmの球状コンクリーションであり、コンクリーションの中心を通るように半割し、非破壊測定とバルク分析用試料を準備した。試料断面の元素マッピングは走査型X線分析顕微鏡(XGT-5200S)、鉱物組成はXRD、元素の酸化状態はX線光電子分光法、微量元素の定量分析はICP-MS、δ13CTOC、δ15NTN、δ34STSはIRMSを用いた。
大陸地殻に対するコンクリーションのバルク元素濃集は、Seが~104倍、As、Uが~103倍、V、Pbが~102倍、Co、Cu、Niが~10倍、Znが数倍であった(Taylor and McLennan 1985)。δ13CTOCは-26.9‰(TOC含有量0.5%)、δ15NTNは1.2‰(TN含有量0.05%)、C/N比が12であり、コンクリーションの有機物が陸源C3植物由来を意味する。一方、δ34Sの-2.2‰(TS含有量0.07%)は、硫酸イオン濃度の低い淡水環境で硫酸還元が制限され、硫酸イオンが完全に枯渇したことを示唆し、Lttileham Mudstone 累層が洪水堆積物に由来することからも支持される(Milodowski et al., 2002)。
コンクリーション内部は、中心付近(直径約2 mmの範囲)にS、Cu、Zn、Se、Pb、Uが分布する。Vは中心から約15 mm範囲にハローを形成し、ハロー内の外側にMo、ハロー縁辺部にNi、Cu、As、Co、U、Zn、さらにその外側にFeが分布する。元素の酸化状態は、Seが-2価、Pbが2価と4価、Moが4価、Vが5価、Asが-2価、-1価、Uが4価であった。また、ハロー縁辺部の元素濃集は、ハロー内側に比べて外側が急こう配であり、元素移動は中心から外に向けて生じたことを示唆する。
本研究の球状コンクリーションは、初期続成過程において、植物化石を核とし、その周囲の有機物や粘土鉱物によって、地下水中のVやUなどの半金属・金属イオンが取り込まれた。そして植物化石の腐食・分解に伴い、還元化が進行すると、コンク―ション中央部にPb、Se、その外側をV5+を含む粘土鉱物のハローが同心円状に広がり、ハロー内部にMo4+、その縁辺部にAs2-、U4+など、さらにハローの外側にFe2+の酸化還元フロントが形成されたと考えられる。
研究試料は直径約40 mmの球状コンクリーションであり、コンクリーションの中心を通るように半割し、非破壊測定とバルク分析用試料を準備した。試料断面の元素マッピングは走査型X線分析顕微鏡(XGT-5200S)、鉱物組成はXRD、元素の酸化状態はX線光電子分光法、微量元素の定量分析はICP-MS、δ13CTOC、δ15NTN、δ34STSはIRMSを用いた。
大陸地殻に対するコンクリーションのバルク元素濃集は、Seが~104倍、As、Uが~103倍、V、Pbが~102倍、Co、Cu、Niが~10倍、Znが数倍であった(Taylor and McLennan 1985)。δ13CTOCは-26.9‰(TOC含有量0.5%)、δ15NTNは1.2‰(TN含有量0.05%)、C/N比が12であり、コンクリーションの有機物が陸源C3植物由来を意味する。一方、δ34Sの-2.2‰(TS含有量0.07%)は、硫酸イオン濃度の低い淡水環境で硫酸還元が制限され、硫酸イオンが完全に枯渇したことを示唆し、Lttileham Mudstone 累層が洪水堆積物に由来することからも支持される(Milodowski et al., 2002)。
コンクリーション内部は、中心付近(直径約2 mmの範囲)にS、Cu、Zn、Se、Pb、Uが分布する。Vは中心から約15 mm範囲にハローを形成し、ハロー内の外側にMo、ハロー縁辺部にNi、Cu、As、Co、U、Zn、さらにその外側にFeが分布する。元素の酸化状態は、Seが-2価、Pbが2価と4価、Moが4価、Vが5価、Asが-2価、-1価、Uが4価であった。また、ハロー縁辺部の元素濃集は、ハロー内側に比べて外側が急こう配であり、元素移動は中心から外に向けて生じたことを示唆する。
本研究の球状コンクリーションは、初期続成過程において、植物化石を核とし、その周囲の有機物や粘土鉱物によって、地下水中のVやUなどの半金属・金属イオンが取り込まれた。そして植物化石の腐食・分解に伴い、還元化が進行すると、コンク―ション中央部にPb、Se、その外側をV5+を含む粘土鉱物のハローが同心円状に広がり、ハロー内部にMo4+、その縁辺部にAs2-、U4+など、さらにハローの外側にFe2+の酸化還元フロントが形成されたと考えられる。