日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT17] 地理情報システムと地図・空間表現

2024年5月29日(水) 13:45 〜 15:00 304 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)、座長:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)

13:45 〜 14:00

[HTT17-01] 機械学習を使ったDEMのモデリングによる半田山の地形解析

西村 準1、*山川 純次1 (1.岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域)

キーワード:デジタル地形モデル、モデリング、機械学習、クリギング、傾斜度解析

近年,地形のデジタルモデル(DEM: Digital Elevation Model)化とオープンデータとしての提供が進んでいる。さらにこれらのDEMは高解像度化され,地域は限定されるが1mピッチのDEMまでオープンデータとして利用できる。しかし高解像化されたDEMでは数メートル規模の巨岩などもデータ化されているため,丘陵や山体などの地形の概要を検討する場合はDEMを接峰面図(Summit level map)などの包絡曲面(Envelope Plane)でモデリングする必要がある。今回,DEMのモデリングに機械学習を応用したので報告する。

モデリングの対象とした地形は岡山市に位置する半田山(標高151m)および龍ノ口山(標高257m)で,デジタル地形モデルには国土交通省国土地理院基盤地質情報数値標高モデル(国土地理院, 2024)の10mメッシュ(DEM10b)を用いた。モデリングにはGNU R (R core team, 2024) と機械学習パッケージであるkernlab (Karatzoglou, Smola and Hornik, 2023)および地球統計パッケージであるgstat (Gräler, Pebesma and Heuvelink, 2016)を使用した。地図表現にはQGIS (QGIS Development team, 2023)を使用し,等高線の作成にはContourプラグイン(QGIS Development Team, 2023)を使用した。

まず半田山と龍ノ口山のDEMデータに関して空間構造をバリオグラムにより推定し,通常クリギング法により仮の地形モデル(OKモデル)を得た。次にOKモデルを用いて機械学習アルゴリズムをチューニングした後にDEM10bを学習させ,20mピッチの地形モデル(MLモデル)を推論した。DEMとMLモデルの比較をFig.1に示す。次にMLモデルの傾斜度解析を行い傾斜度ヒストグラムを作成した。最後に傾斜度ヒストグラムのピーク分離を行って傾斜度分布の特性を検討した。その結果,地質が連続すると考えられている半田山と龍ノ口山は傾斜度分布の特性が異なった。これは龍ノ口山の北東に,半田山では見られない流紋岩の分布をもたらす地質作用が影響していると考えられた。

DEMのOKモデルは包絡曲面が必ずDEMのオリジナル点を通る。一方MLモデルはアルゴリズムのチューニング次第ではDEMを完全に再現する過学習モデルを推論する。このため両モデルとも丘陵や山体などの地形の概要を検討する場合は扱いにくい。しかし両手法を併用ことにより地形の検討に適切なモデルが得られると考えられた。