17:15 〜 18:45
[HTT17-P04] 技術革新がもたらす自然体験の時空間的拡張
—realとvirtualの相互補完により垣間見える真の自然環境—
キーワード:サイバーフォレスト、環境教育、情報通信技術
昨今、VR(バーチャル・リアリティ)関連技術の急速な発展に、コロナ禍による強い行動制限を経たことも相俟って、森林や海洋といった様々な自然環境をオンライン上でバーチャルに体験するという活動の試みが、観光や教育といった様々な分野で始まっている。仮にこれをバーチャル自然体験と称するとした場合、このときバーチャル(virtual)という語は、原義的には、現実(real)とほぼ同じものであると認められるものに対して用いられるべきである。会話、購買、金融など様々な場面でrealとvirtualが急速に融け合いつつあるなかで、自然体験におけるrealとvirtualのあり方についても、その適切かつ効果的な活用に向けた慎重な検討が必要である。
自然を体験するという活動は、その場面が観光であれ教育であれ、従来は絶対的にrealすなわち現場に赴いての直接的な体験でしかあり得なかった。一方で、コロナ禍において止むを得ず場当たり的に行われたvirtualな自然体験は、その大半が従来のrealな自然体験を単に代替しようとするものであった。このような、自然体験はrealが本来のあり方であり、止むを得ずvirtualで代替しようとする構造は、自然体験の価値や可能性を限定的なものに留めてしまう危険性を孕んでいる。何故なら、従来のrealな自然体験が、必ずしも理想的で完全な自然体験であるとは言えないからである。
そもそも、自然と人間との間には、時空間的に大きな隔たりが存在している。例えば森林を構成する樹木の寿命は数百年に及ぶことも多く、世代の時間スケールに人間と大きな差が存在する。空間的にも、とりわけ現代は都市環境で暮らす人々が増えており、日常において自然環境は遠隔地であり頻繁に体験することが難しい状況に置かれることが多くなっている。つまり、realな自然体験とは、そもそもこれらの時空間的な隔たりの先にある自然環境の、ほんの一部の一瞬だけを体験するに過ぎないものであり、この点で理想的で完全とは到底言えないものとも考えられる。そして、virtualな自然体験は、この時空間的な隔たりを乗り越え、realでは得難かった長期間で広域的な自然体験を得られる可能性を有している。
自然体験において、virtualはrealの代替ではなく、むしろこれまでrealが孕んでいた構造的な限界を突破する形で相互補完的に位置づけるべきものと考えられる。それは、従来の自然体験を拡張し、真の自然の姿により近いものを体験する方向へと誘なうものである。自然体験においては従来、レイチェル・カーソンのsense of wonderが引き合いに出されることも多いが、人がrealな体験で自然に対して感じるwonderは極めて限定的である。virtualにより時空間的に拡張された体験で自然の真の姿を垣間見ることで、より深いwonderが得られるとも考えられる。
自然を体験するという活動は、その場面が観光であれ教育であれ、従来は絶対的にrealすなわち現場に赴いての直接的な体験でしかあり得なかった。一方で、コロナ禍において止むを得ず場当たり的に行われたvirtualな自然体験は、その大半が従来のrealな自然体験を単に代替しようとするものであった。このような、自然体験はrealが本来のあり方であり、止むを得ずvirtualで代替しようとする構造は、自然体験の価値や可能性を限定的なものに留めてしまう危険性を孕んでいる。何故なら、従来のrealな自然体験が、必ずしも理想的で完全な自然体験であるとは言えないからである。
そもそも、自然と人間との間には、時空間的に大きな隔たりが存在している。例えば森林を構成する樹木の寿命は数百年に及ぶことも多く、世代の時間スケールに人間と大きな差が存在する。空間的にも、とりわけ現代は都市環境で暮らす人々が増えており、日常において自然環境は遠隔地であり頻繁に体験することが難しい状況に置かれることが多くなっている。つまり、realな自然体験とは、そもそもこれらの時空間的な隔たりの先にある自然環境の、ほんの一部の一瞬だけを体験するに過ぎないものであり、この点で理想的で完全とは到底言えないものとも考えられる。そして、virtualな自然体験は、この時空間的な隔たりを乗り越え、realでは得難かった長期間で広域的な自然体験を得られる可能性を有している。
自然体験において、virtualはrealの代替ではなく、むしろこれまでrealが孕んでいた構造的な限界を突破する形で相互補完的に位置づけるべきものと考えられる。それは、従来の自然体験を拡張し、真の自然の姿により近いものを体験する方向へと誘なうものである。自然体験においては従来、レイチェル・カーソンのsense of wonderが引き合いに出されることも多いが、人がrealな体験で自然に対して感じるwonderは極めて限定的である。virtualにより時空間的に拡張された体験で自然の真の姿を垣間見ることで、より深いwonderが得られるとも考えられる。