日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT18] 浅部物理探査が目指す新しい展開

2024年5月28日(火) 13:45 〜 15:00 202 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、磯 真一郎(公益財団法人 深田地質研究所)、木佐貫 寛(応用地質株式会社)、座長:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、磯 真一郎(公益財団法人 深田地質研究所)、木佐貫 寛(応用地質株式会社)

14:00 〜 14:15

[HTT18-02] 電気探査および地中レーダ探査を用いた漏水域の地盤構造調査

*大石 佑輔1尾西 恭亮1、小寺 凌1、品川 俊介 1 (1.国立研究開発法人 土木研究所)

キーワード:河川堤防、漏水、電気探査、地中レーダ探査

1.はじめに
本稿で調査対象とした五ヶ瀬川水系北川左岸の宮崎県北川町長井地区では,2022年9月の豪雨によって、耕作地の広い範囲で漏水被害が発生した。豪雨により河川の水位が上昇したことにより河川水が基礎地盤を浸透し,噴砂が生じたと考えられる。河川堤防および基礎地盤を対象とした電気探査によって河川水の浸透経路を非破壊調査で推定した事例を、筆者らが既に報告している1)。本稿では、噴砂が発生した耕作地にて電気探査を実施し、さらに従来よりも深い深度でのSN比に優れたハイパースタッキングアンテナを使用した地中レーダ探査を実施し、噴砂の分布と対比した。

2.基礎地盤での電気探査・地中レーダ探査
電気探査で得られる「電気比抵抗」(以下、比抵抗という)は、地盤の電気の流れやすさを表す物理量であり、主に地盤を構成する粒径分布および体積含水率の影響を受ける。飽和度が調査対象範囲で概ね一様であると仮定するならば,比抵抗の違いは土粒子の違い・不均質性を反映すると考えることができ,とりわけ細粒成分の多寡と関連がある。比抵抗が高い地盤は,電気を流しやすい細粒成分が少ない土質で構成されており,これは透水係数と正の相関がある。すなわち,比抵抗が高い箇所は,透水性が高い可能性がある地盤であるといえる。
図(a)は調査地および電気探査・地中レーダ探査の測線配置である。電気探査の測線は規模が大きな2つの噴砂の中間を通る河川上下流方向に設定した。電気探査の測定は4極法を用い,電極は1m間隔で設置し,最大64ch・最大隔離係数12とした。地中レーダ探査は、噴砂が発生した耕作地を網羅するように測定した。

3.解析で得られた高比抵抗構造
図(b)は解析で得られた比抵抗断面(カラーコンター表示)および地中レーダ探査から推定した地層境界(赤線表示)と噴砂の位置関係を示す。噴砂発生箇所では深部に高比抵抗(≒高透水性)域が広がっていることが確認できる。地中レーダ探査で読み取った地層境界は、比抵抗断面で1000Ωm程度の境界と概ね対応しており、この地層境界より浅部は細粒成分が多い低比抵抗層、深部は粗粒成分が多い高比抵抗層であると推定できる。これにより既往報告1)と同様に深部に低比抵抗領域が存在して、その表層の低比抵抗層が薄い箇所で噴砂が発生したと推定した。

参考文献
1) 大石ほか(2023):浸透経路推定のための河川堤防基礎地盤の電気探査,第58回地盤工学研究発表会, 講演番号[11-11-3-06].