日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS01] ENVIRONMENTAL, SOCIO-ECONOMIC, AND CLIMATIC CHANGES IN NORTHERN EURASIA

2024年5月26日(日) 15:30 〜 16:45 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:Groisman Pavel(NC State University Research Scholar at NOAA National Centers for Environmental Information, Asheville, North Carolina, USA)、Maksyutov Shamil(National Institute for Environmental Studies)、Streletskiy A Streletskiy(George Washington University)、座長:Groisman Pavel(NC State University Research Scholar at NOAA National Centers for Environmental Information, Asheville, North Carolina, USA)、Dmitry A Streletskiy(George Washington University)、Daria Gushchina(Moscow State University)

16:00 〜 16:15

[MIS01-19] 積雪変質モデルを用いた岩木山における積雪の地球温暖化応答

*井元 士穏1谷田貝 亜紀代1、石田 祐宣1、平島 寛行2山口 悟2 (1.弘前大学、2.国立研究開発法人 防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター)

キーワード:積雪変質モデル、岩木山、非静力学地域気候モデル、気候変動

地球温暖化により気温が上昇し、雪氷面積や積雪期間が減少すると太陽に対する地球の反射(アルベド)が減少する。それにより、加速的に温暖化が進行する「アイスアルベドフィードバック」が発生する。また、雪質が乾雪から湿雪へ変化することで湿雪雪崩の発生に変化をもたらす可能性がある。よって積雪地域において積雪や雪質の変化を推定することは重要である。
本研究は岩木山の山麓 (438 m)、山腹 (1238 m) 、山頂 (1625 m) の3地点で現在気候 (1980年〜1999年) と全球平均約4 K上昇する将来気候 (2076年〜2095年) の積雪深と積雪性質の変化、高度の違いによる積雪性質の変化を定量的に推定する事を目的とする。研究手段として地域気候モデル (NHRCM) の出力値と積雪変質モデル (SNOWPACK) を組み合わせて数値計算を行った。また、雪質については融解状態の指標であり湿雪雪崩と関係のあるざらめ雪と、積雪後の弱層である霜系の雪(こしもざらめ雪、しもざらめ雪)に着目した。
NHRCMデータに基づく積雪深の推定値は、将来気候において3地点全てで減少した。山腹、山頂では月平均積雪深の最大値は現在気候では3月に約290 cmと約320 cmだが、将来気候では2月に約140 cmと約160 cmで、1ヶ月早く最大値を示した。山頂の気温は山腹より約2.5℃低く融解量が少ないため、積雪深の減少幅の最大値は山頂よりも山腹の方が大きい値を示した。現在気候の山麓では4月、山腹と山頂では5月まで積雪を確認できるが、将来気候ではほとんど消雪した。
ざらめ雪の積雪深に占める割合は山麓では現在気候だと減少する月があるが、将来気候では一貫して増加し続けた。山腹、山頂では現在気候だと11〜12月は割合が減少していたが、将来気候では割合が上昇する事を示した。これは、気温上昇によって12月も融解が生じている事を表している。また、ざらめ雪の急激な上昇は現在気候では3〜4月に生じていたが、将来気候では2〜3月に見られ、融解のピークが1ヶ月程度早くなっている。湿雪雪崩が発生する時期はざらめ雪が急速に増加する季節と対応しているため湿雪雪崩のピークは早まることが推定される。
霜系の雪の積雪深に占める割合は将来気候の山麓ではざらめ雪が優位に立つため、全期間で減少した。将来気候の山腹、山頂もざらめ雪の割合が大きく上昇している月は霜系の雪の割合が減少した。