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[MIS08-05] 人新世の日本のジオパークへの導入
キーワード:ジオパーク、人新世
日本ジオパークネットワークによれば,ジオパークとは『地質・地形から地球の過去を知り,未来を考えて,活動する場所』とされている.大地の上に展開されている生態系な環境を考え,そこで活動する人間の暮らしや文化等を総合的にとらえて,教育や持続可能な開発に活かしていくことを目的としている.現在,日本にはユネスコ世界ジオパーク10地域を含む46のジオパークが存在していて,それぞれの地域において特徴を活かした地質遺産の保護,教育・観光への活用を目指した独自の活動が展開されている.一方,地球温暖化といった地球規模の環境変動や島弧における自然災害などといった,全てのジオパークに共通したテーマについての取り組みは模索中である.また,地質学的時間を経て形成された地質・地形の歴史と現在展開されている人間活動との関連を考える場合,時間スケールの違いを理解することの困難性の克服も課題となっていると考えられる.これらの課題に対応した取り組みの一つが人新世概念のジオパークへの導入ではないであろうか.
人新世は,人類が地球の歴史や環境に決定的な影響をおよぼしている特別の時代として,2000年の地球圏・生物圏国際共同研究計画(IGBP)の第1期総括のメキシコでの会議において,オランダの大気化学者のPaul Jozef Crutzenによって突然提唱された(Crutzen and Stoermer, 2000).その後,国際地球科学連合(IUGS)の下の人新世作業部会(AWG)で検討が重ねられ,2023年7月にカナダのクロフォード湖が人新世のGSSP候補地として発表された.2024年8月の韓国でのIUGS理事会で認定されれば,正式の地質時代となる.その下限は,1950年とされている.1950年は,人類の社会経済活動が急激に活発化し,それに伴って地球の自然のシステムの変化の速度が急速になりはじめる(グレートアクセラレーション)年とされた.そして,境界認識のための主マーカーは核実験に伴う放射性核種の増加とされた.地球環境の変動の原因を人類の活動としている点,時間的長さが従来の他の地質年代単元に比較して極めて短い点が大きな特徴である.
人新世の年代幅は,今年も含めて74年である.この年代幅は,地球科学の門外漢である一般市民にとっても,普通の感覚で認識できる対象である.これは,従来からあった普段の生活と地質学的現象との時間的ギャップを埋めるために人新世が良い材料になることをしめしている.例えば,2024年1月1日の能登半島沖地震で,海岸が瞬時にして4m隆起して海成段丘が形成され漁業に大きな被害がでたことは,ジオパークで扱っている地形・地質の形成が人間活動に影響を与えていることの実例である.また,地球温暖化といったグローバルな現象をどうジオパークのテーマに取り込み,個々の地域で具体的に扱っていくかも今後の課題となろう.日本ジオパークネットワークの企画「地球時間の旅展」で提案された,『未来の地層を作る責任は,私たちにある』というフレーズは象徴的である.
[文献]
Crutzen PJ and Stoermer EF (2000) The Anthropocene. Global Change Newsletter, 41, 17 - 18.
人新世は,人類が地球の歴史や環境に決定的な影響をおよぼしている特別の時代として,2000年の地球圏・生物圏国際共同研究計画(IGBP)の第1期総括のメキシコでの会議において,オランダの大気化学者のPaul Jozef Crutzenによって突然提唱された(Crutzen and Stoermer, 2000).その後,国際地球科学連合(IUGS)の下の人新世作業部会(AWG)で検討が重ねられ,2023年7月にカナダのクロフォード湖が人新世のGSSP候補地として発表された.2024年8月の韓国でのIUGS理事会で認定されれば,正式の地質時代となる.その下限は,1950年とされている.1950年は,人類の社会経済活動が急激に活発化し,それに伴って地球の自然のシステムの変化の速度が急速になりはじめる(グレートアクセラレーション)年とされた.そして,境界認識のための主マーカーは核実験に伴う放射性核種の増加とされた.地球環境の変動の原因を人類の活動としている点,時間的長さが従来の他の地質年代単元に比較して極めて短い点が大きな特徴である.
人新世の年代幅は,今年も含めて74年である.この年代幅は,地球科学の門外漢である一般市民にとっても,普通の感覚で認識できる対象である.これは,従来からあった普段の生活と地質学的現象との時間的ギャップを埋めるために人新世が良い材料になることをしめしている.例えば,2024年1月1日の能登半島沖地震で,海岸が瞬時にして4m隆起して海成段丘が形成され漁業に大きな被害がでたことは,ジオパークで扱っている地形・地質の形成が人間活動に影響を与えていることの実例である.また,地球温暖化といったグローバルな現象をどうジオパークのテーマに取り込み,個々の地域で具体的に扱っていくかも今後の課題となろう.日本ジオパークネットワークの企画「地球時間の旅展」で提案された,『未来の地層を作る責任は,私たちにある』というフレーズは象徴的である.
[文献]
Crutzen PJ and Stoermer EF (2000) The Anthropocene. Global Change Newsletter, 41, 17 - 18.