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[MIS09-02] 北太平洋における浮遊性プラスチックの表層除去速度の見積り

キーワード:北太平洋、浮遊性プラスチック、表層除去、粒子追跡モデル
プラスチックやマイクロプラスチックが海洋に遍在することは、深刻な社会問題および環境問題となっている。2000年代以降、マイクロプラスチックの分布と濃度が多数の研究によって調べられている。近年は、マイクロプラスチックの発生源、海洋への輸送経路、河川・海岸・海底・沿岸・外洋・表層・亜表層・深層などのシステム間の輸送メカニズムなどに研究が進展している。これらマイクロプラスチックの研究おいて、最も重要なプロセスの 1 つに表層除去過程がある。このプロセスは、海洋へのプラスチック排出量と観測されているプラスチック量の不均衡、いわゆる「ミッシングプラスチック」または「プラスチックのパラドックス」を解釈するために必要不可欠である。生物付着、生物凝集などの生物的作用は、表層除去の重要なプロセスと考えられる。先行研究では、モデル計算に基づいて 3 年間という表層除去速度がプラスチック現存量観測結果を再現するために最適と示されたが、同様の観測結果は表層除去速度と破片化速度組み合わせることにより、他の表層除去速度でも説明可能であることを示している。また、他の数値実験では表層除去速度にサイズ依存性があり、1 日未満から 90 日超えまで存在すると結論付けられ、垂直移流と生物付着の両方が表層除去速度に影響を与えると指摘している。マイクロプラスチックの表層除去プロセスにまだ不明な部分も多く、海洋におけるマイクロプラスチックの挙動を理解するには、表層除去プロセスの理解が不可欠である。
今回は表層除去過程において、生物過程に着目したパラメータリゼションを導入し、モデル実験と分析を行った。水産研究・教育機構(FRA)が実施してきた1950 年代から現在まで卵稚仔調査のサンプルから復元された日本周辺の海面プラスチックデータと比較するため、1951 年以来65年間に渡り、海岸から放出されるマイクロプラスチックを模した粒子追跡モデル実験を行った。粒子追跡実験の流動場として気象研究所による長期再解析値を利用した。粒子追跡モデルでは粒子が経験するクロロフィルa濃度の積算経験値を計算し、積算経験値が閾値を超えると表面から除去されると仮定し、海面プラスチック復元データの変遷と類似した結果を再現することができる最適な閾値を検討した。海面プラスチック復元データはガウシアン内挿により格子数し、格子数データとモデル計算結果の二乗平均平方根誤差(Root-mean-square error, RMSE)を計算し、7つの閾値の中から最適な閾値を決定した。
その結果、500 mg/m3·day(平均表面クロロフィル a濃度は0.265 mg/m3)を閾値とした際の RMSE が最も小さく、これは表層除去速度が5.2年に相当していた。今回の研究は、65年間に渡る長期の現場モニタリングに整合するように、表層除去速度を推定しており、現場海域における実態を反映していると判断できる。また、生物付着の指標としてクロロフィルaを用いる有効性を示したと考えられる。
今回は表層除去過程において、生物過程に着目したパラメータリゼションを導入し、モデル実験と分析を行った。水産研究・教育機構(FRA)が実施してきた1950 年代から現在まで卵稚仔調査のサンプルから復元された日本周辺の海面プラスチックデータと比較するため、1951 年以来65年間に渡り、海岸から放出されるマイクロプラスチックを模した粒子追跡モデル実験を行った。粒子追跡実験の流動場として気象研究所による長期再解析値を利用した。粒子追跡モデルでは粒子が経験するクロロフィルa濃度の積算経験値を計算し、積算経験値が閾値を超えると表面から除去されると仮定し、海面プラスチック復元データの変遷と類似した結果を再現することができる最適な閾値を検討した。海面プラスチック復元データはガウシアン内挿により格子数し、格子数データとモデル計算結果の二乗平均平方根誤差(Root-mean-square error, RMSE)を計算し、7つの閾値の中から最適な閾値を決定した。
その結果、500 mg/m3·day(平均表面クロロフィル a濃度は0.265 mg/m3)を閾値とした際の RMSE が最も小さく、これは表層除去速度が5.2年に相当していた。今回の研究は、65年間に渡る長期の現場モニタリングに整合するように、表層除去速度を推定しており、現場海域における実態を反映していると判断できる。また、生物付着の指標としてクロロフィルaを用いる有効性を示したと考えられる。