日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS09] 地球科学としての海洋プラスチック

2024年5月27日(月) 13:45 〜 15:00 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、川村 喜一郎(山口大学)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、土屋 正史(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境部門)、座長:磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)

14:45 〜 15:00

[MIS09-05] 海岸模擬環境における発泡ポリスチレンの時間変化に伴う破壊特性

*佐川 奈緒1日向 博文1 (1.愛媛大学)

キーワード:発泡ポリスチレン、ポットミル、パーティクルカウンター、サイズ分布、表面摩耗、形状特徴

プラスチックが太陽紫外線に曝されることにより、ポリマーの急速な劣化が起こることが知られており、海岸はマイクロプラスチック生成のホットスポットと考えられている(Andrady, 2017)。海岸では太陽紫外線だけでなく、波との接触や砂の衝突・摩耗によりプラスチックが微細化する。特に荒天時には、波によって巻き上げられた砂がプラスチックと激しく混合すると考えられる。Song et al. (2017)は、太陽紫外線及び砂の摩耗によるポリエチレン,ポリプロピレン,発泡ポリスチレンの微細化実験を行った。その結果、発泡ポリスチレンは、その独自の発泡構造により、ポリエチレンやポリプロピレンよりも破砕しやすいことがわかった。砂や水との混合によるプラスチック微細化実験は行われているものの、時間変化に伴う微細化量や生成粒子サイズの変化に関する議論はまだ行われていない。
本研究では、破砕しやすいとされる発泡ポリスチレンを対象に、ポットミルによる微細化実験を行った。実験で生成した発泡ポリスチレンの微細化量及びサイズ分布の時間的変化を解析することで、発泡ポリスチレンの破壊モードを推定した。実験は海岸を模倣するため、ポットミルに海岸の砂,超純水,発泡ポリスチレン球(新品,直径5 mm)を投入した。砂,超純水,発泡ポリスチレンの投入量及びポットミルの回転速度は一定とし、ポットミルの回転時間のみを変化させた6つのケース(6時間,12時間,1日間,2日間,3日間,5日間)で実験を行った。実験で生成した発泡ポリスチレンは、ステンレスメッシュ(目合い109 μm)で濾され、ステンレスメッシュの残留物は顕微鏡付属の専用ソフトを使用して計数された。メッシュ通過物は、パーティクルカウンターを使用してサイズごとに計数された。計数は5 μm以上の粒子を対象とした。
サイズ別生成発泡ポリスチレンの粒子数を解析した結果、ポットミルの回転時間によらず、サイズが小さいほど生成粒子数が多く、最小サイズビン(5〜10 μm未満)では103〜104個/μm/pelletが生成した。また、サイズが小さくなるにつれて生成粒子数が指数関数的に増加し、両対数グラフ(横軸にサイズ,縦軸に生成粒子数)で示した場合、全てのケースにおいて直線で近似することができた。この回帰直線の傾きは、回転時間が長くなるほど小さくなった。また、回転時間が1日未満の場合、全ての粒子が150 μm未満であったにも関わらず、1日以上になると150 μm以上の発泡ポリスチレンが生成され始め、3日以上ではその粒子数が急激に増加した。回転時間の変化に伴い、発泡ポリスチレンの破壊モードが変化することがわかった。
今後は、レーザー顕微鏡,電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM),X線CTを用いて、生成発泡ポリスチレンの表面や内部構造を観察することで、破壊モードの変化をもたらす要因や微細化過程を推定する。また、海岸で採取した漂着発泡ポリスチレンについても、同様の手法で表面や内部構造を観察する。生成発泡ポリスチレンと漂着発泡ポリスチレンの形状特徴を比較することで、ポットミルによる微細化実験の有用性や実海域への適用範囲について検討する。