日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS09] 地球科学としての海洋プラスチック

2024年5月27日(月) 15:30 〜 16:45 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、川村 喜一郎(山口大学)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、土屋 正史(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境部門)、座長:磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)

15:30 〜 15:45

[MIS09-06] 瀬戸内海海底堆積物中のポリエチレンテレフタレートマイクロプラスチック(PET-MPs)の定量

古田 詩乃2、高橋 伸弥1、平島 宗一郎1岩本 洋子1、*竹田 一彦1 (1.広島大学大学院統合生命科学研究科、2.広島大学総合科学部)

キーワード:ポリエチレンテレフタレート、マイクロプラスチック、瀬戸内海、堆積物

近年、海洋プラスチック汚染が世界的な問題として注目される中、マイクロプラスチック(MPs)汚染について数多くの研究がなされている。これまで主に行われてきたMPsの分析定量では、複雑な前処理でMPsを分離した後、FT-IRなどで同定し、個数計測し定量化を行ってきた。しかし、これらの方法は熟練した操作や、多大な時間を要するなどの問題があった。本研究ではプラスチックの中でも飲料ボトルや食品容器、衣類繊維として多用されているポリエチレンテレフタレート(PET)に着目し、海底堆積物中の全PET量を加水分解し定量する法を確立し、瀬戸内海堆積物のPET MPs現存量を推定することを目的に研究を行った。
本研究ではアルカリ加水分解法でPETをテレフタル酸(TPA)に加水分解し、高速液体クロマトグラフィー(LC)を用いて定量した。TPAをLCで定量する際に使用する分離カラムとしては、LCで一般的に使用されるC18(ODS)逆相カラムではなく、親水性相互作用を用いたHILICカラムを使用した。瀬戸内海海底堆積物は広島大学附属練習船豊潮丸でスミスマッキンタイヤー採泥器で表層堆積物を採取した。
まず最初に、高純度PETを海底堆積物試料に添加した添加回収実験で手法を最適化し良好な回収率の結果が得られた。本研究で最適化した実験・分析手法で海底堆積物中のPET を定量した結果、瀬戸内海の海底堆積物には0.04~2.58µg/g-DWの範囲でPET MPsが含まれていることが明らかになった。PET MPs濃度は閉鎖性が強く大都市に隣接した大阪湾や広島湾で濃度が高かった。講演では手法の最適化の詳細や瀬戸内海全体での現存量の推定などについて講演する。