日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS09] 地球科学としての海洋プラスチック

2024年5月27日(月) 15:30 〜 16:45 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、川村 喜一郎(山口大学)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、土屋 正史(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境部門)、座長:磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)

16:15 〜 16:30

[MIS09-09] 街中プラスチックごみ定量化の実証実験と3DCGモデルを用いた街ごみ学習用画像データの自動生成

*室屋 龍之介1、伊島 康陽2加古 真一郎1,3松岡 大祐1,3磯辺 篤彦4佐々木 創5、櫻井 英雄6池辺 靖6 (1.鹿児島大学大学院理工学研究科、2.鹿児島大学工学部、3.海洋研究開発機構、4.九州大学応用力学研究所、5.中央大学、6.板橋区立教育科学館)

キーワード:街中プラスチックごみ、市民科学、スマートフォンアプリ、深層学習、物体検出、3DCG

海洋プラスチックごみの多くは、不適切な管理により街から流出した生活ごみが河川を介して海洋へ流入したものである(Lebreton et al., 2017)。しかし、客観的かつ効率的な観測に基づく街中プラスチックごみの定量化手法は世界的に見てもまだ確立されていない。そこで我々は、スマートフォンアプリ(ピリカ)を通じた市民科学によって得られた街ごみ画像と、深層学習による画像解析を用いた、街中プラスチックごみの定量化手法を提案した(室屋ら, JpGU2023)。本研究では、この手法を用いた市民と協働した街ごみ定量化の実証実験と、本モデルのより高い汎用性とより詳細な分類を目指して、学習用画像データの自動構築手法についても検討を行なった。実証実験は、板橋区立教育科学館によって開催されたごみ拾いワークショップ「みんなで参加!プラスチックごみ画像収集プロジェクト」を通じて行なった。参加者らは、事前調査で定めたルートに従ってごみを拾いながら、ピリカを用いてこれらの画像を収集した。参加者らは、ルート上全てのごみを回収・撮影しているので、画像中のごみをカウントすることで、スタートからゴール地点までの街ごみ現存量が推定可能である。本実証実験によって集められた画像を目視で確認すると、我々の構築した深層学習モデルには学習させていないごみ(例えば、パンやお菓子等の食品包装)も多く存在した。この結果は、本手法による街中プラスチックごみ定量化の実現には、より多くの街ごみの検出・分類に対応した深層学習モデルの構築が欠かせないことを示唆している。モデルの構築には、対象の街ごみが撮影された画像が必要であるが、学習に必要なだけの十分な量のデータを集めることは容易では無い。そこで、Blenderにより製作した3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)モデルを用いることで、学習データを自動生成するシステムの構築を試みた。3DCGは、一度ごみのモデルを作成すれば、その色や背景、撮影距離・角度等を設定することで容易に大量の画像を製作することが可能である。学習データの作成の際には、画像中の対象物のクラス分類(何が写っているのか)とその画素座標を抽出するアノテーションを施す必要があるが、これはRoboflow(https://roboflow.com)を使用し、手作業で行なった。これを使えば、学習データのオーグメンテーション(データ増強)やRoboflow上で構築したモデルまたは公開されているモデル(例えば、MSCOCO)を用いたアノテーション作業の自動化も可能である。本研究では学習用画像の製作条件を変えて複数の深層学習モデルを構築しており、これらと室屋ら(JpGU2023)との比較を行なうことで、本街ごみ学習用画像データ構築手法の実用性および課題について検討した。