日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS09] 地球科学としての海洋プラスチック

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、川村 喜一郎(山口大学)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、土屋 正史(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境部門)

17:15 〜 18:45

[MIS09-P05] 福岡県博多湾の海底表層堆積物中のマイクロプラスチックの分布と特性

*天野 敦子1板木 拓也1、宇智田 奈津代2、田中 厚資2、鈴木 剛2 (1.産業技術総合研究所、2.国立環境研究所)

キーワード:マイクロプラスチック、堆積物、形状、組成、博多湾

本研究は河口から海域へのマイクロプラスチック(MP)の移動過程を明らかにすることを目的に,福岡県博多湾の海底表層堆積物中のMP分布とその特性の変化について調査した.表層堆積物は2022年11月に福岡県博多湾の御笠川の河口部,湾央部,湾口部の3地点でスミスマッキンタイヤーを用いて採取した.効率的に多量の堆積物からMPを抽出するために,採取試料を10μmメッシュのネットでろ過した水道水と篩を用いて1 mm以上,1 mm~500 μm,500~300 μmに分画した.7.8mol/Lのヨウ化ナトリウムを用いて比重分離し,捕集した浮遊物を過酸化水素で酸化処理した.その残留物からマニュピレータ搭載した自動計測顕微鏡システム(Itaki et al.,2020)を用いてMP候補粒子の形状と色の計測し,1粒子毎に拾い出しを行った.そして,近赤外分光分析(FT-IR)の全反射(ATR)法を用いてMPのプラスチック組成の判定を行った.
 含水率から見積もった乾燥重量1 kg中の堆積物に含まれるMPの個数密度は河口部で341.4個/kgと最も多く,湾奥部で48.7個/kg,湾口部で28.4個/kgと湾口に向かって減少する傾向を示す.いずれの地点においてもMPの最大長は大部分が2 mmから500µmであるが,河口部では500μmよりも細粒なMPも含まれる.プラスチック組成比はどの地点でもポリエチレン(PE)が2割程度を示すが,地点毎に傾向は異なる.河口部ではPEとポリプロピレン(PP)が半数を占める.湾央部ではPEが25%で,次いでポリアミド(PA)が19%,エチレンプロピレンゴム(EPDM)が13%を占める.湾口部ではポリスチレン(PS)が27%,次いでPEとアクリルがそれぞれ18%を占める.河口部の地点でMPが多く,湾口部に向かって減少する傾向を示すことは,含まれるMPは河川から排出されたプラスチック由来であることを示唆する.今後,堆積物の特性等と比較し,MPの移動過程について検討する.
本研究は環境総合推進費1-2204「海洋流出マイクロプラスチックの物理・化学的特性に基づく汚染実態把握と生物影響評価(JPMEERF20221004)」で実施した.
引用:Itaki et al. (2020) Automated collection of single species of microfossils using a deep learning– micromanipulator system. Progress in Earth and Planetary Science, 7, 19.