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[MIS10-04] 東南極周辺南大洋の環境変化と生物地球化学循環・低次生態系の応答
キーワード:南大洋、生物地球化学、時系列観測、高時空間分解能モデル
南極周辺海域は、栄養や水産資源が豊富にもかかわらず、植物プランクトンなど低次生物の生産がとても少ない海域で、高栄養塩(硝酸塩、アンモニア、珪酸塩、リン酸塩)・低クロロフィル(HNLC)海域と呼ばれている。昭和基地がある東南極は、温暖化があまり進行していないとされていたが、最近、特にトッテン氷床でその融解が進行していることが日本の観測から明らかにされてきた。南極氷床の融解は、大量の淡水を供給することで周辺の海洋物理環境や栄養などの物質循環、海洋生態系に大きく影響すると考えられるがその関係性については全くわかっていない。そこで、観測とモデルシミュレーションのアプローチで、2つの問いに答えていく。1つ目は、東南極周辺海域のHNLC海域としての特徴を現場観測から把握する。物理環境ー生物地球化学循環ー海洋生態系を結ぶ未解明のリンクについてどのような仮説が立つか?2つ目は、海氷ー海洋物理ー生物地球化学循環ー低次生態系を結合するモデルを構築する。モデルの結果は観測によって提示される物理環境-物質循環-生物生産を結ぶ仮説をどこまで記述できるか? さらに、東南極周辺の南大洋低次生態系は、将来、どう変わっていく可能性があるか?
問1については、大陸と沖合の間の海氷、海水(水塊)および物質の輸送を駆動する原動力である、定在性の渦(直径約100km)が4つ存在し、その1つに水温 (T)と塩分(S)センサー、流向流速計などを搭載した時系列物理係留系を設置し、日単位でデータを取得する。また、セジメントトラップを用いて生物が生産する大型の粒子を週単位で捕捉する。中〜小サイズ粒子、動物プランクトンなど遊泳粒子を捉えるため、イベントベースビジョンセンサーも搭載する。係留系周辺にはT、S、DO、pH、硝酸塩、Chl.aのセンサーを搭載した生物地球化学(BGC)フロートを戦略的に展開する。係留系とBGCフロートの物理・化学・生物データを統合し、渦の物理や栄養塩などの化学環境、低次生物生産の実態を明らかにし、間を結ぶメカニズムの仮説を立てる。2つ目の問いについては、高い時間・空間解像度の地球システムモデル(地球全体を約25kmメッシュの空間解像度で計算)と、海洋生態系―生物地球化学循環を結びつけ、統合的なモデルを開発する。統合モデルで、物理・化学環境と低次生態系の応答との関係性について、南大洋を広域的に記述する。加えて、観測データを用いて統合モデルを高度化し、高度化したモデルでCO2排出シナリオに沿った海洋生態系―生物地球化学循環の将来像を示すとともに、水産資源の将来の行方を推測していく。
問1については、大陸と沖合の間の海氷、海水(水塊)および物質の輸送を駆動する原動力である、定在性の渦(直径約100km)が4つ存在し、その1つに水温 (T)と塩分(S)センサー、流向流速計などを搭載した時系列物理係留系を設置し、日単位でデータを取得する。また、セジメントトラップを用いて生物が生産する大型の粒子を週単位で捕捉する。中〜小サイズ粒子、動物プランクトンなど遊泳粒子を捉えるため、イベントベースビジョンセンサーも搭載する。係留系周辺にはT、S、DO、pH、硝酸塩、Chl.aのセンサーを搭載した生物地球化学(BGC)フロートを戦略的に展開する。係留系とBGCフロートの物理・化学・生物データを統合し、渦の物理や栄養塩などの化学環境、低次生物生産の実態を明らかにし、間を結ぶメカニズムの仮説を立てる。2つ目の問いについては、高い時間・空間解像度の地球システムモデル(地球全体を約25kmメッシュの空間解像度で計算)と、海洋生態系―生物地球化学循環を結びつけ、統合的なモデルを開発する。統合モデルで、物理・化学環境と低次生態系の応答との関係性について、南大洋を広域的に記述する。加えて、観測データを用いて統合モデルを高度化し、高度化したモデルでCO2排出シナリオに沿った海洋生態系―生物地球化学循環の将来像を示すとともに、水産資源の将来の行方を推測していく。
