[M-IS10] 南大洋・南極氷床が駆動する全球気候変動

[MIS10-08] 総観規模大気循環による水蒸気輸送が最終氷期最盛期の南極内陸降水同位体比に与える影響

*木野 佳音¹、Cauquoin Alexandre²、岡崎 淳史³、沖 大幹¹、芳村 圭² (1.東京大学大学院工学系研究科、2.東京大学生産技術研究所、3.千葉大学国際高等研究基幹)

キーワード：古気候、氷床コア、南極、気候モデル、水同位体

南極氷床コアに含まれる水の安定同位体比は重要な古気候プロキシであるが、どのような大気循環の影響を反映しているかについては議論の余地がある。本研究では、水同位体気候モデル（MIROC5-iso）を用いて、2.1万年前の最終氷期最盛期（the Last Glacial Maximum; LGM）の海面水温（sea surface temperature; SST）と海氷が大気循環を通じて南極降水同位体比（δ¹⁸O_p）へ与える影響を調べた。結果として、総観規模循環が南極へ大陸内陸に達する水蒸気輸送を主に担っていることがわかった。南半球中緯度SSTの南北勾配が強くなると、傾圧不安定が強められ総観規模の南向き水蒸気輸送が強化されることで、南極内陸のδ¹⁸O_pが高くなった。一方、海氷面積の増大は南極大陸周辺の大気を冷却し水蒸気量を減少させることで、海洋から南極内陸へ水蒸気塊が輸送される過程を通じてδ¹⁸O_pが低くなった。以上の結果は、南極氷床コアの水同位体比が過去の南半球の大気循環を制約するのに有用であることを示している。

K. Kino, A. Cauquoin, A. Okazaki, T. Oki, K. Yoshimura, Synoptic Moisture Intrusion Provided Heavy Isotope Precipitations in Inland Antarctica during the Last Glacial Maximum, Geophys. Res. Let. (Under revision). https://essopenarchive.org/doi/full/10.22541/essoar.170689105.5446982