17:15 〜 18:45
[MIS10-P03] GIAモデリングから推定される東南極リュツォ・ホルム湾周辺における完新世中期の急速な氷床融解と再拡大
キーワード:氷河性地殻均衡調整、南極氷床、完新世中期、GNSS、マントル粘性率
氷床融解史とGIAによる地殻変動は,特に南極のような氷床域において,地形・地質学的に観測される相対的海水準変動や現在の測地学的観測,さらには現在の氷床質量収支の定量的評価に大きく影響する.南極氷床変動とマントルの粘弾性的性質との間に生じる相互作用は,複雑な南極GIAをさらに複雑にしている.それにもかかわらず,GNSSのような測地観測は,南極GIAのモデルパラメータを制約するために極めて重要である.
最近,南極大陸における氷河地形的証拠と表面露出年代の蓄積とそれらの解析により,急速な氷床高度低下とそれに続く再拡大を含む,完新世中期の南極氷床の詳細な変動史が明らかになってきている(例えば、Johnson et al., 2022).また,東南極のリュツォ・ホルム湾周辺の表面露出年代に関する最近の研究では,完新世中期の3000年間で約400mの急速な氷床高度低下が示されている(Kawamata et al., 2020).そこで本研究では,リュツォ・ホルム湾沿岸の測地学的観測から,GIAによるシグナルの影響を検討した.また,対象とする領域のおける完新世中期の急速な氷床高度低下を考慮した氷床融解史を構築し,GIA数値シミュレーションを行った.
Kawamata et al.(2020)の結果は,この地域で約9 kaから6 kaにかけて400 m以上の急速な氷床高度低下が起こったことを示しているが,ICE-6G_D(Peltier et al., 2018)といった代表的な退氷モデルでは,この急激な融解過程は考慮されていない.そこで,この急激な融解を含む変動履歴を用いて,測地学的変動シグナルを定量的に調べた.本研究における結果は,修正された氷床変動履歴を取り入れることで,対象地域におけるGNSS観測結果と一致したシミュレーション結果が得られた.この結果は,完新世中期における急速な氷床融解が測地学的にも支持されうることを示すとともに,測地観測がこの地域の氷床融解過程の制約に大きく貢献できることを示唆している.さらに本研究では,精密なGIAモデリングに基づいて,急速な後退に続く再拡大の可能性とその条件となるGIAのモデルパラメータついて,定量的な結果に基づいて議論する.
最近,南極大陸における氷河地形的証拠と表面露出年代の蓄積とそれらの解析により,急速な氷床高度低下とそれに続く再拡大を含む,完新世中期の南極氷床の詳細な変動史が明らかになってきている(例えば、Johnson et al., 2022).また,東南極のリュツォ・ホルム湾周辺の表面露出年代に関する最近の研究では,完新世中期の3000年間で約400mの急速な氷床高度低下が示されている(Kawamata et al., 2020).そこで本研究では,リュツォ・ホルム湾沿岸の測地学的観測から,GIAによるシグナルの影響を検討した.また,対象とする領域のおける完新世中期の急速な氷床高度低下を考慮した氷床融解史を構築し,GIA数値シミュレーションを行った.
Kawamata et al.(2020)の結果は,この地域で約9 kaから6 kaにかけて400 m以上の急速な氷床高度低下が起こったことを示しているが,ICE-6G_D(Peltier et al., 2018)といった代表的な退氷モデルでは,この急激な融解過程は考慮されていない.そこで,この急激な融解を含む変動履歴を用いて,測地学的変動シグナルを定量的に調べた.本研究における結果は,修正された氷床変動履歴を取り入れることで,対象地域におけるGNSS観測結果と一致したシミュレーション結果が得られた.この結果は,完新世中期における急速な氷床融解が測地学的にも支持されうることを示すとともに,測地観測がこの地域の氷床融解過程の制約に大きく貢献できることを示唆している.さらに本研究では,精密なGIAモデリングに基づいて,急速な後退に続く再拡大の可能性とその条件となるGIAのモデルパラメータついて,定量的な結果に基づいて議論する.
