15:45 〜 16:00
[MIS11-07] 北アルプス蝶ヶ岳・妖精ノ池線状凹地における土層の断面と年代
キーワード:線状凹地、山地湛水域、完新世の環境変化、14C年代、岩盤重力変形
北アルプス南部の蝶ヶ岳-徳本峠間の山稜はジュラ紀付加体堆積岩類からなり,岩盤の重力変形(DSGSD)が著しく進んでいる。このため線状凹地や低崖列などの特徴的な微・小地形が稜線の一帯に発達する。演者らは,北アルプス南部において,線状凹地の底に存在する池沼やその周辺の斜面の形成年代を解明する研究を進めてきた。2023年8月には,蝶ヶ岳山頂南方の妖精ノ池を擁する線状凹地の底部で表層地質の掘削調査を行った。その結果,長さ60 cmの柱状コア(YOS-2023)を得た。コアの大部分が腐植に乏しい岩屑層であったが,地表付近と深度40~60 cmはやや腐植に富んでいた。コアの深度40~50 cm部分から得たバルク試料の14C年代は5,901~5,730 cal BPであった。この線状凹地では,完新世半ばに植生が存在して凹地埋積物に腐植を供給していたが,その後,斜面上の岩屑の移動が活発化して土層に混入した可能性がある。これは完新世後期の気候冷涼化に関連するかもしれない。この間,妖精ノ池の水位も変動していた可能性がある。