日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 古気候・古海洋変動

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)、小長谷 貴志(東京大学大気海洋研究所)

17:15 〜 18:45

[MIS12-P06] 北西太平洋亜熱帯域のセジメントトラップ試料から得られた浮遊性有孔虫の季節変化

*橋本 優里1黒柳 あずみ2鈴木 淳3山岡 香子3、藤井 武史4、近藤 俊祐4、鴨志田 紘子5 (1.国立大学法人東北大学、2.東北大学総合学術博物館、3.産業技術総合研究所地質調査総合センター、4.株式会社KANSOテクノス、5.独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構)

キーワード:浮遊性有孔虫、セジメントトラップ

浮遊性有孔虫は,主として石灰質の殻をもつ動物プランクトンで,殻の化学組成や群集組成に海洋表層の環境を記録するため,古海洋学的研究や古環境解析に用いられている.より精密な環境復元には,海洋環境の変化に対する浮遊性有孔虫の応答について把握する必要があるが,特に北西太平洋亜熱帯域においては,浮遊性有孔虫に関する報告が不足している.本研究では,時系列セジメントトラップ試料を用いて,浮遊性有孔虫フラックスおよび群集組成の季節変化を詳細に検討した.その結果,全22種の浮遊性有孔虫が確認され,うち11種が約93.5%を占めた.浮遊性有孔虫のフラックスには明瞭な季節変化が見られ,各種はそれぞれ異なる季節変化を示した.このことから,浮遊性有孔虫のフラックスは種によって異なる要因に規制されることが示唆された.クラスター解析を用いて季節変化のパターンを分類した結果,3つのグループが判別された.グループAは本研究で産出した浮遊性有孔虫の約66%を占める.亜熱帯種で構成され,多くが共生藻を持つ.最も高い産出を示したG. ruberのフラックスは,12月と7月に2つの大きなピークを示した.これらのピークはいずれも水温が高い時期(~28℃)に観測された.この種の高水温期のピークは,温暖で貧栄養な他の海域においても観察された.したがって,温暖かつ貧栄養な海域では,SSTがG. ruberにとって最適となる時期(25~30℃)にフラックスが最大になる可能性が示唆される.グループBは比較的深層に生息するGloborotalia属の3種で構成され,一年に一度,夏季にピークを示す.このピークはこれらの種の本海域においての繁殖時期を反映すると考えられる.グループCはGlobigerinella siphoniferaで,明瞭な季節変化は見られず,年間を通じて低い値を維持した.