17:15 〜 18:45
[MIS12-P09] 最新版大気海洋結合モデル(MIROC6)による4200年前の日射条件が日スケールの気象要素に与える影響の解析
キーワード:ミランコビッチ、気候モデル、古気候、極端気象、4.2kaイベント
中期と後期完新世の境界に位置付けられる4.2kaイベントは、全球的な乾燥化・寒冷化イベントとして知られており、古代文明崩壊との関連がしばしば議論されている。4.2kaイベントの要因は未解明であり、特に日射条件の変化が果たした役割は不明である。本研究では、4.2kaと産業革命前(PI)の日射条件がそれぞれ気候学的平均及び日スケールの気温と降水量に与える影響を、最新版の大気海洋結合モデル(MIROC6)を用いた平衡応答実験により調べた。特に、メソポタミア地域を含む中東において、アッカド帝国の中心都市テル・レイラン(37˚N58˚E)と古気候プロキシ記録がしばしば採取されるオマーン湾に面したマスカット(23˚N58˚E)の2地点に焦点を当てた解析を行なった。
結果として、PIに比べて4.2 kaでは夏季に高温多雨、冬季に低温少雨の傾向が両地点でみられた。マスカットでは、PIには冬季が雨季、夏季が乾季であった降水量の季節性が、4.2kaで逆転していた。テル・レイランではこのような季節性の逆転は認められなかった。さらに、日平均値の頻度解析の結果からは、極端気象の発生頻度が日射条件によって変化することが明らかになった。夏季のマスカットでは、気温が30度以下かつ降水量が20 mm/日以上の極端な低温・降水イベントがPIにはおよそ20年に一度発生していたが、4.2kaにはおよそ5年に一度とより高頻度で発生していた。夏季のテル・レイランでは、気温と降水量の間に統計的に有意な負の相関が認められたが、マスカットでみられたような極端現象は発生しなかった。冬季には、両地点で気温と降水量の間に統計的に有意な弱い相関が認められ、降水イベントは極端低温イベントに必ずしも対応しなかった。
これらの成果は、日射条件の変化が気候に与える影響を理解する上で日スケールの解析が有用であることを示している。テル・レイランとマスカットで定性的に異なる結果が得られたことは、モデルのバイアスやプロキシ記録の空間代表性において慎重な議論が必要であることを指摘している。今後は亜熱帯高気圧や冬季偏西風、夏季モンスーンの様相に着目した大気循環場の解析を進め、気候学的平均や極端気象の頻度に影響を与える要因を検討する予定である。
結果として、PIに比べて4.2 kaでは夏季に高温多雨、冬季に低温少雨の傾向が両地点でみられた。マスカットでは、PIには冬季が雨季、夏季が乾季であった降水量の季節性が、4.2kaで逆転していた。テル・レイランではこのような季節性の逆転は認められなかった。さらに、日平均値の頻度解析の結果からは、極端気象の発生頻度が日射条件によって変化することが明らかになった。夏季のマスカットでは、気温が30度以下かつ降水量が20 mm/日以上の極端な低温・降水イベントがPIにはおよそ20年に一度発生していたが、4.2kaにはおよそ5年に一度とより高頻度で発生していた。夏季のテル・レイランでは、気温と降水量の間に統計的に有意な負の相関が認められたが、マスカットでみられたような極端現象は発生しなかった。冬季には、両地点で気温と降水量の間に統計的に有意な弱い相関が認められ、降水イベントは極端低温イベントに必ずしも対応しなかった。
これらの成果は、日射条件の変化が気候に与える影響を理解する上で日スケールの解析が有用であることを示している。テル・レイランとマスカットで定性的に異なる結果が得られたことは、モデルのバイアスやプロキシ記録の空間代表性において慎重な議論が必要であることを指摘している。今後は亜熱帯高気圧や冬季偏西風、夏季モンスーンの様相に着目した大気循環場の解析を進め、気候学的平均や極端気象の頻度に影響を与える要因を検討する予定である。