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[MIS12-P21] 更新世カラブリアン期における日本海南縁部のアルケノン古水温計
キーワード:第四紀、大桑層、アルケノン古水温計
更新世カラブリアン期は4.1万年周期の氷期-間氷期サイクルが卓越することが知られている。大桑層は石川県金沢市から富山県小矢部市に分布する海成層であり、微化石や古地磁気により更新世カラブリアン期の年代が与えられている。これまで大桑層中部では堆積物の粒度変化サイクル、貝化石群集の産出状況およびGlobigerinoides ruberの相対存在度等に基づいて氷期-間氷期サイクルが明瞭に記録されていることが論じられてきた。一方、大桑層下部では中部と比較して各種指標から氷期-間氷期サイクルが認識しづらく,また堆積当時の古水温値のデータもない。
そこで本研究では生物指標有機分子(バイオマーカー)の一種であるハプト藻由来のアルケノン分子に注目する。炭素数37のアルケノンの不飽和数が2つのものと3つのものの相対比(UK’37)が形成時期の表層水温と直線関係があることを利用するアルケノン古水温計は、第四紀の海洋堆積物を用いた古海洋学で広く用いられる。これを陸上に露出する大桑層下部に応用することを検討した。同試料を分析した結果、アルケノンを33試料中、32試料で検出することができた。異性体の有無に基づいて続成の影響を確認したところ古水温評価に有用であると判断した。アルケノン古水温計に基づいて堆積当時の表層水温を推定した結果、大桑層下部では19.7℃から27.0℃の範囲に及ぶ変動を確認した。現在の日本海南部ではUK’37は6月上旬の表層水温に一致することを勘案すると、本研究の古水温データはカラブリアン期の6月上旬の表層水温が現在と比較して最大8℃高かった可能性、もしくはカラブリアン期ではアルケノンが形成された季節が現在と異なる可能性を示唆している。アルケノン古水温の層序変動は、既存研究で指摘された氷期及び間氷期の層序的推定位置と基本的に調和的であった。今後貝化石密集層を中心にデータを増やし、氷期の古水温を記録している層準の特定を厳密に行っていく必要がある。
そこで本研究では生物指標有機分子(バイオマーカー)の一種であるハプト藻由来のアルケノン分子に注目する。炭素数37のアルケノンの不飽和数が2つのものと3つのものの相対比(UK’37)が形成時期の表層水温と直線関係があることを利用するアルケノン古水温計は、第四紀の海洋堆積物を用いた古海洋学で広く用いられる。これを陸上に露出する大桑層下部に応用することを検討した。同試料を分析した結果、アルケノンを33試料中、32試料で検出することができた。異性体の有無に基づいて続成の影響を確認したところ古水温評価に有用であると判断した。アルケノン古水温計に基づいて堆積当時の表層水温を推定した結果、大桑層下部では19.7℃から27.0℃の範囲に及ぶ変動を確認した。現在の日本海南部ではUK’37は6月上旬の表層水温に一致することを勘案すると、本研究の古水温データはカラブリアン期の6月上旬の表層水温が現在と比較して最大8℃高かった可能性、もしくはカラブリアン期ではアルケノンが形成された季節が現在と異なる可能性を示唆している。アルケノン古水温の層序変動は、既存研究で指摘された氷期及び間氷期の層序的推定位置と基本的に調和的であった。今後貝化石密集層を中心にデータを増やし、氷期の古水温を記録している層準の特定を厳密に行っていく必要がある。