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[MIS12-P24] 沖縄県南大東島石筍コアによる過去9万年間の同位体変動

キーワード:古気候、同位体、鍾乳石、石筍
アジアモンスーンは何十億もの人々の生活に影響を与える気候システムであり、その変動メカニズムを理解するためにさまざまなプロキシを用いて過去の変動パターンが復元されている。なかでも洞窟内に生成する石筍は生成年代を正確に測定でき、酸素安定同位体 (δ18O) はアジアモンスーン地域における降水量や気温の復元に用いられている。特に中国の石筍δ18Oは長期間にわたる連続したデータを保存しており、数千年スケールではダンスガード・オシュガーイベント (D-Oイベント) に対応した変動がみられる (Cheng et al., 2016) 。しかし、日本のKiriana CaveやOhtaki Cave等の石筍δ18OにはD-Oイベントに対応した変動は明確には確認できない (Mori et al., 2018) 。また、北半球の夏の日射量 (NHSI) に対して、中国石筍のδ18O記録とアジア周辺海域の海底堆積物のδ18O記録は異なる位相差を示す。このような地域差を解釈するためには、大陸から離れた地域で長期のデータを得ることが重要になる。そこで、我々のグループでは沖縄県南大東島の山下洞にて、大型石筍の中心部分をボーリング掘削して長尺の石筍コアを採取した。この石筍コアのうち2試料においてU-Th年代測定を行った結果、石筍コアの成長期間は12.5 kyr BP (千年前) から91.1 kyr BPであることが明らかになり、さらにδ18O測定ではD-Oイベント13 – 22に対応した変動がみられた。発表では、年代とδ18Oの追加測定の結果も踏まえ、今回石筍を採取した亜熱帯北西太平洋海域と中国石筍との比較により海洋と大陸の変動パターンの差異について議論を行う。