16:00 〜 16:15
[MIS13-03] 2023年関東で観測された夏季雷の中和電荷量の違いに関する数値的考察
キーワード:気象雷モデル、中和電荷量、雷放電
本研究では,夏季の雷放電に伴う中和電荷量の季節内変動の要因を,雷を物理モデルに基づいて直接計算する雷モデルを実装した気象モデルScalable Computing for Advanced Library and Environment (SCALE)用いて調べた.対象とした期間と場所は2023年6月〜8月の北関東(群馬県)であり,この期間中に著者らのグループによって実施された地上電場観測によって推定された雷放電に伴う中和電荷量の季節内変動の違いを数値モデルを用いて調査した.佐藤ら (2024)が実施した地上電場観測の解析から,2023年の6月28日に観測された雷放電による中和電荷量は,同年8月23日に観測された雷放電による中和電荷量よりも小さいことが明らかになっていたが,その原因は明らかではなかった.
そこで本研究では,その原因を調べるため,2023年6月〜9月に,毎日4回にSCALEを用いた数値実験を実施した(00, 06, 12, 18 UTCに計算開始).気象場の初期値境界値には気象業務支援センターから配信されるメソ数値予報モデル(MSM)のデータを使用し,土壌水分,土壌気温,地表面気温は気象庁55年長期再解析(JRA55)の月平均値を用い,48時間(00, 12 UTC開始)および36時間(06, 18 UTC開始)の積分を行った.
SCALEの計算結果の解析から,SCALEは6月28日と8月23日に観測された中和電荷量の違いを定性的には再現していた.また結果の解析から,梅雨期末期の6月〜7月中旬は中和電荷量の大きい事例が計算されることがある一方,7月下旬から8月末にかけては,中和電荷量が小さい事例がほとんどであった.SCALEの出力をさらに解析すると,梅雨期末期は下層から上層まで湿って不安定な大気であったため,電荷分離に必須となる霰が生成されやすい環境であり,雲内に電荷が蓄えられやすい環境であった.一方,7月下旬から8月末にかけては,梅雨期末期に比べ安定で,高度6~8 kmの中層付近が梅雨期末期に比べ乾いていたため,霰が生成されにくい環境であり,梅雨期末期に比べ霰が生成され難く,雲内に電荷が蓄えられ難い環境であった.このような環境の違いにより,中和電荷量の違いが出たものを考えられる.
Reference
佐藤光輝, 佐藤陽祐, 稲津將,長尾篤,山下由美子,枡田俊久,中村尚倫,池田高志, (2024), 高崎市周辺での多点同時静電界観測に基づく雷放電中和電荷量と位置の推定, 大気電気学会第102回研究発表会, 6, 神戸, 兵庫, 2024年1月
そこで本研究では,その原因を調べるため,2023年6月〜9月に,毎日4回にSCALEを用いた数値実験を実施した(00, 06, 12, 18 UTCに計算開始).気象場の初期値境界値には気象業務支援センターから配信されるメソ数値予報モデル(MSM)のデータを使用し,土壌水分,土壌気温,地表面気温は気象庁55年長期再解析(JRA55)の月平均値を用い,48時間(00, 12 UTC開始)および36時間(06, 18 UTC開始)の積分を行った.
SCALEの計算結果の解析から,SCALEは6月28日と8月23日に観測された中和電荷量の違いを定性的には再現していた.また結果の解析から,梅雨期末期の6月〜7月中旬は中和電荷量の大きい事例が計算されることがある一方,7月下旬から8月末にかけては,中和電荷量が小さい事例がほとんどであった.SCALEの出力をさらに解析すると,梅雨期末期は下層から上層まで湿って不安定な大気であったため,電荷分離に必須となる霰が生成されやすい環境であり,雲内に電荷が蓄えられやすい環境であった.一方,7月下旬から8月末にかけては,梅雨期末期に比べ安定で,高度6~8 kmの中層付近が梅雨期末期に比べ乾いていたため,霰が生成されにくい環境であり,梅雨期末期に比べ霰が生成され難く,雲内に電荷が蓄えられ難い環境であった.このような環境の違いにより,中和電荷量の違いが出たものを考えられる.
Reference
佐藤光輝, 佐藤陽祐, 稲津將,長尾篤,山下由美子,枡田俊久,中村尚倫,池田高志, (2024), 高崎市周辺での多点同時静電界観測に基づく雷放電中和電荷量と位置の推定, 大気電気学会第102回研究発表会, 6, 神戸, 兵庫, 2024年1月