[M-IS13] 大気電気学：大気電気分野の物理現象解明から減災への応用まで

[MIS13-09] Si ピクセル検出器 Timepix3 を用いた電子飛跡トラッキングによる MeV ガンマ線の指向性計測と冬季北陸TGF観測への応用

*田中 敦也¹、中澤 知洋¹、大熊 佳吾¹、大宮 悠希 ¹、安藤 美唯¹、大口 真奈里¹、榎戸 輝揚²、和田 有希³、一方井 祐子⁴、Wu Ting ⁵、Wang Daohong ⁵ (1.名古屋大学、2.京都大学、3.大阪大学、4.金沢大学、5.岐阜大学)

キーワード：Terrestrial Gamma-ray Flash (TGF)、指向性検出器、Timepix3 : Si半導体アクティブピクセルイメージャ、電子飛跡トラッキング

日本海沿岸部では毎年11月から3月にかけて冬季雷雲が発達するが、その特徴の一つとして雷雲からMeVガンマ線が地上に降り注ぐことが知られている。雷ガンマ線には、雷放電と同時に瞬間的に放射する Terrestrial Gamma-ray Flash (TGF)と、雷雲そのものが数分にわたって放射する Gamma-ray glowがある。これらは雷雲中に生じる静電場にて電子が加速されることで生じる制動放射が起源と考えられているが、電子加速領域の場所や成立条件、その時間変動など、多くの謎が残されている。GROWTH実験では、2006年から冬季日本海沿岸部での観測に取り組んでおり、我々名大グループも2018年度から継続して金沢地域に観測装置を展開している。2022年度プロジェクトにおいては、従来型の検出器に加えて新型のTGF指向性観測装置を展開し、11月末から3月中旬にかけての長期運用に成功した。
新型検出器は、Si半導体アクティブピクセル検出器　Timepix3、及びチェレンコフ検出器（2023大会安藤講演、本大会大口講演）の2つである。この内、Timepix3 は55×55µm² のピクセルで、1.56 nsの時間分解能をもち、高精度イメージングと超高時間分解能を両立し、さらにホールの移動速度を用いて検出器内で生じる高速荷電粒子の飛跡を3次元的に追える高いポテンシャルを持つ検出器である。MeVガンマ線が相互作用することで生じる高速電子は、Si内部でピクセルサイズよりも長い、トラッキング可能な飛跡を形成する。高輝度、高エネルギーガンマ線放射現象であるTGFならば、得られる運動量情報を統計的に処理することでガンマ線到来方向の推定が可能であることに着目し、これまでとは全く異なるアプローチでの電子加速域の3次元方位各計測に挑戦した。
約4ヶ月間の観測の中、Timepix3は2022年末（2022年12月18日）のTGFイベントを検出した。瞬間的に非常に明るいイベントであったため検出器の処理速度を上回り、データ抜けが発生したものの、一部のデータは記録されており、明確な電子飛跡の一群を捉えたことを確認している。本講演ではTGFイベントの解析を中心に、観測の最新情報を報告する。