日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS14] 生物地球化学

2024年5月30日(木) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:福島 慶太郎(福島大学農学群食農学類)、木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)

17:15 〜 18:45

[MIS14-P05] 日本列島の6地域における林内雨と林外雨における塩化物イオンの負荷量

*稲垣 善之1今村 直広1 (1.森林総合研究所)

キーワード:塩化物イオン、林外雨、林内雨、海塩、人為起源

森林生態系において塩化物イオンのほとんどは降水や乾性降下物によって供給される。林外雨や林内雨によって供給される塩化物イオンの多くの部分は海塩を起源とすると考えられている。しかし、日本の森林において海塩性と非海塩性の塩化物イオンの寄与率についての情報は少ない。本研究では全国6地域において観測された林内雨と林外雨について非海塩性の硫酸イオンおよび塩化物イオンの寄与を明らかにした。データは森林総合研究所の「森林降水渓流水質データベース」から得た。調査地は北海道、岩手県、長野県、京都府、高知県、熊本県の13林分であり、落葉樹林が5林分、常緑樹林が8林分であった。それぞれの林分において2~8年にわたって林外雨および林内雨による元素負荷量のデータを用いた。海塩性の硫酸イオンおよび塩化物イオンの濃度はナトリウムを基準として計算した。その結果、林外雨では非海塩性由来の硫酸イオン、塩化物イオンの割合の平均値は、それぞれ86%、-5%であった。一方、林内雨の非海塩性由来の硫酸イオン、塩化物イオンの割合は、それぞれ87%、27%であった。林外雨では塩化物イオンはほとんどが海塩性であったが、林内雨では非海塩性の塩化物イオンが無視できない割合で存在することが示された。非海塩性の塩化物イオンの割合は、非海塩性硫酸イオンの割合と高い相関関係を示し、人為起源による硫酸負荷の寄与が多い林分で非海塩性塩化物イオンの寄与が大きくなった。また非海塩性の塩化物イオンの割合は、ナトリウム供給量の少ない内陸部で大きい値を示したが常緑樹林と落葉樹林の間に差は認められなかった。以上の結果より、人為起源に由来する非海塩性の塩化物イオンが乾性降下物として森林に供給され、その寄与は内陸部で大きいことが示された。