日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS16] 惑星火山学

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:野口 里奈(新潟大学 自然科学系)、諸田 智克(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)、下司 信夫(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

17:15 〜 18:45

[MIS16-P01] 露頭柱状図自動作成のための描画・レポート生成アルゴリズムの開発

*釘宮 恵那1野口 里奈2 (1.新潟大学理学部、2.新潟大学 自然科学系)

キーワード:柱状図、自動化、露頭、火星

従来の露頭観察および柱状図の作成は、専門的知識を有する人間の経験や判断に基づき行われている。そのため、地質調査を行うにはある程度トレーニングが必要である。しかし、調査経験がある人間でも客観性が担保できない場合や、現地での限られた時間の中で作業時間を十分に確保できない可能性が考えられる。これらについて、自動化・アルゴリズム化などの手法を取り入れることで、一つの指標を作ることができ、またより効率的な地質調査が可能となるのではないかと考えた。地質学の分野でも自動化やアルゴリズム化は導入されつつあり、そういった手法が当たり前となるのも目前である。

本研究では柱状図に着目した。柱状図は層厚・粒度・構成物などの情報を視覚的に表現する図法であり、描画を自動化できると同一基準からなる柱状図を作成することが可能となる。また、地理的にアクセス困難な場所や地球上にない露頭など、直接観察ができない露頭でもドローンや衛星による画像等のデータから柱状図を作成することができる。

柱状図にも様々な種類があるが、今回想定したのは露頭観察をもとに作成する露頭柱状図である。柱状図の作成には層厚の測定、粒度の測定、構成物の判定などが必要だが、本研究では「層厚の測定」「柱状図描画」についての自動化を、プログラミングによるアルゴリズムを作成することで試みた。開発環境はMac OS Ventura13.2.1 、Anaconda3-5.3.1 Spyder5.4.3で行った。データとしては露頭写真(手持ちカメラ撮像画像・HiRISE, MROによる衛星画像)、標高データ(HiRISE DTM)を使用している。またQGISも合わせて使用している。

 柱状図描画は、1. 画像などのデータから層厚を自動的に求める 2. 求めた層厚をもとに柱状図を描画する 3. 柱状図やマップ、露頭写真などを統合し、レポートとして自動出力する という3段階からなっている。また、航空写真や衛星画像でも柱状図を作成するため、A. 露頭の正対写真から層厚を抽出する場合 B. 標高データから層厚を抽出する場合 の2パターンを作成した。最初にAのアルゴリズムについて、構築手法を説明する。まず、露頭に正対した写真に境界線を記入する。次に、記入した線の色を白、その他を黒として二値化処理を行う。次に、二値化画像に柱状図描画用線(ウィッシュライン)を指定し、線上の輝度値を読み取り、ピクセル距離とともにcsvファイルに格納する。このデータを用いて層厚を計算する。層厚は、輝度値が255から再度255になるまでのピクセル距離であるため、それを求めるようなコードを記述した。その層厚をもとにExcelファイルを作成する。A列に層厚、B列に粒度、C列に構成物を指定する。B列、C列についてはマニュアルで内容を指定する必要がある。指定には入力規則を利用することができる。Excelファイルへ入力後、入力内容を矩形描画のための引数に変換したのち、ループ関数を用いて矩形を描画し、積み上げて柱状図の形を作っていく。以上で完成したアルゴリズムにより、およそ想定通りの柱状図を描画することができた。次にDEMデータから層厚を抽出する場合のアルゴリズムについて説明する。最初にQGIS上で対象としたい露頭の画像データ・標高データを展開し、地層境界と判断した箇所に線を描画する。次にそれと交差するようにウィッシュラインを描画する。さらに、境界線とウィッシュラインの交わる点を解析ツールを用いて自動的にプロットする。プロットされた交点の標高を、プラグインであるPoint Sampling Toolを使用し読み取り、csvファイルとして出力する。このファイルのデータを使用し、層厚を求める。以降のプロセスはAの露頭正対画像の場合と同様である。このパターンでも、柱状図を描画するアルゴリズムが作成できた。

 これらのアルゴリズムを使用して実際の露頭での動作試験を行った。実地試験では、実際の露頭で測定した層厚との比較、また地層の枚数が多い露頭での動作を確認した。比較については、実測値/アルゴリズムによる層厚の比を求め、その平均値と標準偏差を求めた。結果、層厚を97±15%の範囲で抽出できた。また、地層の枚数が多い露頭での実験もうまくいき、アルゴリズムにより柱状図を描画できた。

本アルゴリズムの実際の露頭での使用について、地球上・地球外の露頭いずれでも露頭記載の負担が減り、短時間で大量に柱状図を描画できる。また、統一的な様式で描画可能であり、柱状図の清書にも使用できる。直接観察が難しい路頭でも、画像・標高データを使用し層厚を自動的に抽出できる。

今後は、地層境界線を自動で引く技術などと本アルゴリズムを繋げることで、より多くの作業の自動化が期待できる。