17:15 〜 18:45
[MIS18-P02] ガスジェット浮遊による過冷却液滴からの準安定γ-Al2O3成長とその融解熱測定

キーワード:ガスジェット浮遊法、融解熱、準安定
酸化物融体の融解熱はガラス溶融炉やマグマ溜まりでの結晶化に伴う熱移動現象の数値シミュレーションにとって重要である。また近年では、機能性材料として準安定酸化物も注目されており、準安定相を含む熱力学データおよび凝固プロセスの理解の重要性は高まりつつある。従来、融解熱は落下型熱量計や示差走査熱量計を用いて測定されている。しかし、一般に酸化物は高融点であるため、容器との反応や輻射による熱損失のため融解熱測定は困難である。そこで、本研究ではガス流によって試料を浮遊・融解できるガスジェット浮遊法を用いたハイパークーリングリミット測定を行いAl2O3の融解熱の算出を試みた。
無容器で過冷却状態にある融体が凝固するとき、その過冷却度ΔTと凝固時に温度が一定となるプラトー時間Δtとの間にはΔHf=CpΔT+αΔtのような比例関係がある。ここでΔHfは融解熱、Cpは液体の定圧熱容量、αは輻射およびガス流による強制対流熱伝達による熱損失を示す項である。αはガス流、全半球放射率が一定のもとで定数とみなすことができる。この関係式を用いて熱プラトー時間が0となるΔTをHypercooling limit ΔThypとし、Cpとの積から融解熱を求めた。
ガスジェット浮遊装置を用いて、Ar雰囲気下で浮遊させたα-Al2O3試料に、CO2レーザーを照射することで融解させた。完全に融解させたのち、レーザー電源を切り、急冷凝固させた。試料温度は融点で校正した2色温度放射計で測定した。またまた、試料の凝固時の挙動を理解するために、ハイスピードカメラを用いた凝固プロセスのその場観察を行った。得られた凝固時の温度履歴から過冷却度と熱プラトー時間の関係を求めた。プロットに対する線形フィッティングから決定したAl2O3のHypercooling limit ΔThyp=443 KとAl2O3液体の定圧熱容量Cp = 192.464 J mol-1 K-1から求めた、Al2O3の融解熱は85.3 kJ mol-1でありNIST-JANAFに掲載されたα-Al2O3の融解熱である111 kJ mol-1よりも小さい。このプロセスを高速度カメラでその場観察したところ、小さい過冷却状態では一度凝固したAl2O3が再融解するが分かった。回収後の試料をXRD分析したところ、準安定相であるγ-Al2O3が生成していることが分かった。
この凝固過程のその場観察およびXRD分析より、次のような凝固プロセスが明らかになった。過冷却となった融体から、初晶で準安定なγ-Al2O3が核形成する。そして、γ-Al2O3が成長する過程において安定相であるα-Al2O3が核形成し、融液―α-Al2O3が平衡する温度まで局所的に温度が上昇する。この昇温によって、先に凝固したγ-Al2O3が融解し、部分融解した融液からα-Al2O3が凝固する。
今回測定したAl2O3の融解熱は、NIST-JANAFのγ-Al2O3の融解熱78.5 kJ mol-1に近い値を示している。このことから非接触での融解熱測定を行うことで、過冷却から凝固した準安定なγ-Al2O3の融解熱を直接測定できたと考えられる。
無容器で過冷却状態にある融体が凝固するとき、その過冷却度ΔTと凝固時に温度が一定となるプラトー時間Δtとの間にはΔHf=CpΔT+αΔtのような比例関係がある。ここでΔHfは融解熱、Cpは液体の定圧熱容量、αは輻射およびガス流による強制対流熱伝達による熱損失を示す項である。αはガス流、全半球放射率が一定のもとで定数とみなすことができる。この関係式を用いて熱プラトー時間が0となるΔTをHypercooling limit ΔThypとし、Cpとの積から融解熱を求めた。
ガスジェット浮遊装置を用いて、Ar雰囲気下で浮遊させたα-Al2O3試料に、CO2レーザーを照射することで融解させた。完全に融解させたのち、レーザー電源を切り、急冷凝固させた。試料温度は融点で校正した2色温度放射計で測定した。またまた、試料の凝固時の挙動を理解するために、ハイスピードカメラを用いた凝固プロセスのその場観察を行った。得られた凝固時の温度履歴から過冷却度と熱プラトー時間の関係を求めた。プロットに対する線形フィッティングから決定したAl2O3のHypercooling limit ΔThyp=443 KとAl2O3液体の定圧熱容量Cp = 192.464 J mol-1 K-1から求めた、Al2O3の融解熱は85.3 kJ mol-1でありNIST-JANAFに掲載されたα-Al2O3の融解熱である111 kJ mol-1よりも小さい。このプロセスを高速度カメラでその場観察したところ、小さい過冷却状態では一度凝固したAl2O3が再融解するが分かった。回収後の試料をXRD分析したところ、準安定相であるγ-Al2O3が生成していることが分かった。
この凝固過程のその場観察およびXRD分析より、次のような凝固プロセスが明らかになった。過冷却となった融体から、初晶で準安定なγ-Al2O3が核形成する。そして、γ-Al2O3が成長する過程において安定相であるα-Al2O3が核形成し、融液―α-Al2O3が平衡する温度まで局所的に温度が上昇する。この昇温によって、先に凝固したγ-Al2O3が融解し、部分融解した融液からα-Al2O3が凝固する。
今回測定したAl2O3の融解熱は、NIST-JANAFのγ-Al2O3の融解熱78.5 kJ mol-1に近い値を示している。このことから非接触での融解熱測定を行うことで、過冷却から凝固した準安定なγ-Al2O3の融解熱を直接測定できたと考えられる。