[M-IS20] 津波堆積物

[MIS20-P01] むかわ町西部の17世紀津波堆積物の空間分布の特徴

*高清水 康博¹、西村 裕一²、岩城 昂平³ (1.新潟大学、2.北海道大学、3.富川中学校)

キーワード：津波堆積物、粒度組成、空間分布

北海道胆振海岸東部の沿岸低地からは17世紀津波堆積物が分布することが報告されており（髙清水ほか，2007），1611年の慶長三陸地震による津波堆積物と考えられている（西村ら、2023）．しかしながら，津波堆積物の標高分布，層厚，および粒度組成の面的な特徴（空間分布）については報告がなく，津波規模を考える上で課題となっていた．これらの情報は津波防災・減災を考えるための基礎資料としても重要であり，その実像を把握する必要があった．そこで，むかわ町西部の沿岸低地において広域に密にならないように調査地点を設けた上で津波堆積物の特徴の空間分布を検討した．
入鹿別川から鵡川までの間の沿岸低地（海岸線に沿って約4 km，内陸へ約1.5 kmの範囲）の33地点において実施した掘削調査の結果，6地点を除く27地点から津波堆積物を確認した．津波堆積物の分布標高は，西側で低く（3.5～5.0 m程度），東側で高い（5.0～6.3 m程度）標高を示した．津波堆積物の層厚は，海側で最大33 cmであり，多くが10 cmと厚くなる傾向があるものの内陸側へ単調に減じることはなく，層厚の変化が顕著であった．このことは，沿岸低地に保存された津波堆積物の特徴である可能性があり，今後，詳細な検討をする必要がある．粒度分布の特徴は、調査地域の西部では二峰性分布、東部では単峰性分布が支配的であった。すべての試料の細粒フラクションのモード粒径は非常に細粒の砂で安定（φ3.125～3.375）していたが、粗粒フラクションは粗粒から細粒の砂（φ0.375～2.125）とばらつきがあった。また粗粒なフラクションが多様であることを反映して，細粒な方から積算して90％の粒径（D₉₀粒径）も多様であった．海岸線からの距離とD₉₀粒径、海岸線からの距離と粗粒フラクションの分モード粒度の間に内陸細粒化傾向が認められた。これらの特徴から，津波に含まれる粗粒フラクションは沿岸低地を遡上する間に減少し，最終的には消失したことがわかる．その代わりに，細粒フラクション（極細粒砂）が支配的となった．我々は，将来の津波浸水シミュレーションやハザードマップ作成に貢献するため，津波堆積物の空間分布の特徴の検討をさらに続けていく．さらに，どのようなパラメータが津波浸水シミュレーションやハザードマップ作成のために真に有効であるのか明らかにしていきたい．