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[MIS20-P03] 三陸海岸南部における歴史津波および洪水堆積物と推定される津波波源の特徴

2011年東北地方太平洋沖地震(以後東北沖地震とする)以降,津波堆積物研究に乏しかった三陸海岸でも研究が行われており,仙台平野,石巻平野で得られた津波堆積物との対比が行われた(例えばIshimura and Miyauchi, 2015;高田ほか,2016).このうち,三陸海岸北部では貞観地震や1611年慶長三陸地震,1454年享徳地震と言った東北地方太平洋側の広い範囲で対比されている堆積物と年代が重なる堆積物が得られた.しかし,三陸海岸南部における津波堆積物調査は,宮城県南三陸町の大沼(Ishimura and Miyauchi, 2017)以南では行われておらず,さらに他の地域で得られた堆積物と対比ができるデータは得られていない.三陸海岸は津波常襲地域として認識されており,特に,その南部は東北沖地震の主破壊域の近傍に位置する地域である.東北沖地震は震源近くの深部だけでなく,海溝軸付近の浅部においても大きく滑ったことが特徴とされるが,同様の地震が過去に発生していたのかどうかは未だ不明である.このすべりの影響を直接的に受けているのは正面に位置する三陸海岸南部であると考えられる.
本研究では,三陸海岸南部において津波堆積物データを得るため,現地調査を実施し,分析によってイベント堆積物の認定を行った.調査地域は三陸海岸南部に位置する宮城県石巻市北上地区であり,ハンディジオスライサーおよびSCSC式ボーリングを用いて掘削調査を行った.得られたコアにおいて室内分析を行い,また当地域へのすべりの影響を推定するため,すべり域を浅部と深部に分けたモデルを作成して津波土砂移動計算を行った.
9地点の掘削結果から,有機質シルト層の間に複数のイベント性砂層,1層のイベント性粘土層が確認された.年代と層相で対比を行い,8地点で得られた砂層をS1,4地点で得られた粘土層をM1とした.基底侵食面,偽礫,内陸細粒化等の堆積学的な特徴,また堆積環境,周囲の地形から,S1は津波堆積物である可能性が考えられる.14C年代が1730 cal AD以降であることから現時点では1793寛政地震津波に該当すると推定されるが,年代値の不確実性から他のイベントの可能性も残る.津波土砂移動計算では,当地域の津波堆積物は深部のすべりの影響を受けて形成され、浅部の寄与はほぼ無いことが判明した.一方でM1は,常時堆積物と比べて粒度が細粒でラミナが発達した粘土層であった.XRD分析により上下の有機質シルトには含まれていないカオリナイト/スメクタイト混合層が確認された.これは上流起源と考えられるため洪水堆積物である可能性が高い.
本研究では,三陸海岸南部において津波堆積物データを得るため,現地調査を実施し,分析によってイベント堆積物の認定を行った.調査地域は三陸海岸南部に位置する宮城県石巻市北上地区であり,ハンディジオスライサーおよびSCSC式ボーリングを用いて掘削調査を行った.得られたコアにおいて室内分析を行い,また当地域へのすべりの影響を推定するため,すべり域を浅部と深部に分けたモデルを作成して津波土砂移動計算を行った.
9地点の掘削結果から,有機質シルト層の間に複数のイベント性砂層,1層のイベント性粘土層が確認された.年代と層相で対比を行い,8地点で得られた砂層をS1,4地点で得られた粘土層をM1とした.基底侵食面,偽礫,内陸細粒化等の堆積学的な特徴,また堆積環境,周囲の地形から,S1は津波堆積物である可能性が考えられる.14C年代が1730 cal AD以降であることから現時点では1793寛政地震津波に該当すると推定されるが,年代値の不確実性から他のイベントの可能性も残る.津波土砂移動計算では,当地域の津波堆積物は深部のすべりの影響を受けて形成され、浅部の寄与はほぼ無いことが判明した.一方でM1は,常時堆積物と比べて粒度が細粒でラミナが発達した粘土層であった.XRD分析により上下の有機質シルトには含まれていないカオリナイト/スメクタイト混合層が確認された.これは上流起源と考えられるため洪水堆積物である可能性が高い.