10:15 〜 10:30
[MIS23-06] 津波によって運搬・埋積した鯨骨:令和6年能登半島地震による「鯨骨依存生物群集の形成実験」から「脊椎動物の化石化過程」への研究展開(能登町九十九湾における事例)
★招待講演
キーワード:津波、再堆積、化石化過程、タフォノミー
能登半島能登町小木に位置する金沢大学環日本海域研究センター臨海実験施設の前に広がる九十九湾において,2020年にミンククジラ全身骨格(頭骨と椎骨)2個体分,2023年に連結した椎骨(約10個弱の椎骨)を沈設して,鯨遺骸の分解過程や遺骸に形成される鯨骨依存生物群集(鯨骨群集)の形成過程を明らかにする実験を展開していた.その実験の途中で,2024年1月1日に令和6年能登半島地震およびそれに伴う津波が発生した.
津波発生から約3週間経過した2024年1月22日に九十九湾においてマルチプルコアラーによる採泥を行い,また,1月23日にスキューバによる海底調査を行ったところ,海底観察の結果,水深約16mに設置していた鯨遺骸の頭骨1個(2020年設置分),おそらく2020年に設置した椎骨のうちの1個,2023年に設置した連結した椎骨を,水深約18~20mの範囲で発見した.頭骨や連結した椎骨は,地震前(2023年11月時点)では海底面上にあったが,半分以上が泥に埋没していた.単体の椎骨は,津波によって形成されたと考えられるレキ(数十cm径のものを含む)からなるデューンの構成“粒子”の一つとして転がっていた.
潜水調査の前日である1月22日に,水深約22mの海底から柱状堆積物を採取し,その解析の結果,海底面から約8cmの厚さにおいて,砂の薄層とその上に重なる泥層からなる津波によると考えられるイベント堆積物が認定された.
巨レキを含むデューンの存在と柱状堆積物に見られるイベント堆積物から,九十九湾に到達した津波によって海底堆積物の大きな運搬と再堆積が生じた.同時に,沈設していた鯨骨も,水深16mから約20m(水平変位は未測定だが,10m以上)へと運搬され,泥に半分以上埋没したと考えられる.
今後,鯨骨の現在位置の正確な把握や鯨骨周辺の堆積層の詳細観察,経時的な海底・鯨骨観察を続けていき,それらを含めて発表を行う予定である.これは天然環境における津波に伴う脊椎動物遺骸の化石化過程を観測した稀有な例となるだろう.
津波発生から約3週間経過した2024年1月22日に九十九湾においてマルチプルコアラーによる採泥を行い,また,1月23日にスキューバによる海底調査を行ったところ,海底観察の結果,水深約16mに設置していた鯨遺骸の頭骨1個(2020年設置分),おそらく2020年に設置した椎骨のうちの1個,2023年に設置した連結した椎骨を,水深約18~20mの範囲で発見した.頭骨や連結した椎骨は,地震前(2023年11月時点)では海底面上にあったが,半分以上が泥に埋没していた.単体の椎骨は,津波によって形成されたと考えられるレキ(数十cm径のものを含む)からなるデューンの構成“粒子”の一つとして転がっていた.
潜水調査の前日である1月22日に,水深約22mの海底から柱状堆積物を採取し,その解析の結果,海底面から約8cmの厚さにおいて,砂の薄層とその上に重なる泥層からなる津波によると考えられるイベント堆積物が認定された.
巨レキを含むデューンの存在と柱状堆積物に見られるイベント堆積物から,九十九湾に到達した津波によって海底堆積物の大きな運搬と再堆積が生じた.同時に,沈設していた鯨骨も,水深16mから約20m(水平変位は未測定だが,10m以上)へと運搬され,泥に半分以上埋没したと考えられる.
今後,鯨骨の現在位置の正確な把握や鯨骨周辺の堆積層の詳細観察,経時的な海底・鯨骨観察を続けていき,それらを含めて発表を行う予定である.これは天然環境における津波に伴う脊椎動物遺骸の化石化過程を観測した稀有な例となるだろう.