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[MIS23-P11] 東北日本 ペルム紀-前期白亜紀付加体砕屑性ジルコンの複合化学分析による花崗岩バソリス形成・消滅史の解明

キーワード:砕屑性ジルコン、北部北上帯、根田茂帯、U-Pb年代
日本列島を含めたアジア・ユーラシア大陸東縁部は約5億年前から現在まで続く太平洋型造山運動によって形成された地質体である.花崗岩バソリスは,この造山プロセスで形成され,その地球化学的特徴から岩石形成時の沈み込み帯内部の物質構造やテクトニクスの変化を復元することができる重要な岩石記録である (Chapman et al., 2017).しかし花崗岩形成後の構造侵食をはじめとする地質改変イベントにより, アジア・ユーラシア大陸東縁部におけるジュラ紀以前の岩石記録の多くは,その分布が限定的であり,過去のテクトニクスを復元することが困難である.そこで,本研究では東北日本 後期ペルム紀と三畳紀末-前期白亜紀付加体からなる北部北上帯ならびに後期ペルム紀-前期三畳紀付加体からなる根田茂帯滝ノ沢ユニットの砂岩に含まれる砕屑性ジルコンに着目し,LA-ICP-MSによるジルコンU–Pb年代と微量元素組成から,アジア大陸東縁部においてペルム紀からジュラ紀にかけて形成された花崗岩バソリス形成・消滅史を議論する.
U–Pb年代測定から,ジュラ紀に堆積した付加体砕屑岩は,後期ペルム紀から前期三畳紀および後期三畳紀から前期白亜紀ピークを持つにbimodalな年代ヒストグラムを示すことに対し,後期ペルム紀付加体は後期ペルム紀から前期三畳紀にピークを持つunimodalなヒストグラムを示す.微量元素測定から,後期ペルム紀付加体の330-240Maジルコンは低U/Yb (0.1-0.7)を示すのに対し,ジュラ紀付加体の同時代のジルコンは高U/Yb (0.7-2.0)を示し,240Ma-150Maジルコンも高U/Yb(0.7-3.0)を示す.これらのジルコンのHf濃度やEu異常は両時代の付加体において有意な差は見られないことから,U/Ybの変化はマグマの結晶分化作用によるメルト組成の変化ではなく,メルトを作った地殻物質の違いを反映していると考察される.ジルコンを晶出させたメルトのテクトニックセッティングの違いを表すU/Yb vs. Hf plotに本研究で得られたデータをプロットすると,後期ペルム紀付加体のジルコンは海洋性島弧のような未成熟な地殻で形成されたマグマから結晶化したジルコンと,ジュラ紀付加体のジルコンは大陸内部の比較的成熟した地殻で形成されたマグマから結晶化したジルコンの組成範囲と重なる (Barth et al., 2017).
以上の結果から, 1)後期ペルム紀付加体の形成時には,後背地に後期ペルム紀から前期三畳紀の花崗岩バソリスが分布し,ジュラ紀付加体形成時には後期ペルム紀から前期三畳紀および後期三畳紀からジュラ紀の花崗岩バソリスが分布していた,2)後期ペルム紀付加体にジルコンを供給した花崗岩バソリスは,低U/Ybを示す海溝側の未成熟な地殻物質から形成されたものであるのに対して,ジュラ紀付加体には高U/Ybを示す大陸内部の成熟した地殻物質から形成された花崗岩からジルコンが供給されていた,ことが考察される.以上を踏まえると,ジュラ紀付加体形成時にはそれまで海溝側に存在した未成熟な後期ペルム紀-前期三畳紀花崗岩バソリスの大部分が消滅したことが示唆される.
U–Pb年代測定から,ジュラ紀に堆積した付加体砕屑岩は,後期ペルム紀から前期三畳紀および後期三畳紀から前期白亜紀ピークを持つにbimodalな年代ヒストグラムを示すことに対し,後期ペルム紀付加体は後期ペルム紀から前期三畳紀にピークを持つunimodalなヒストグラムを示す.微量元素測定から,後期ペルム紀付加体の330-240Maジルコンは低U/Yb (0.1-0.7)を示すのに対し,ジュラ紀付加体の同時代のジルコンは高U/Yb (0.7-2.0)を示し,240Ma-150Maジルコンも高U/Yb(0.7-3.0)を示す.これらのジルコンのHf濃度やEu異常は両時代の付加体において有意な差は見られないことから,U/Ybの変化はマグマの結晶分化作用によるメルト組成の変化ではなく,メルトを作った地殻物質の違いを反映していると考察される.ジルコンを晶出させたメルトのテクトニックセッティングの違いを表すU/Yb vs. Hf plotに本研究で得られたデータをプロットすると,後期ペルム紀付加体のジルコンは海洋性島弧のような未成熟な地殻で形成されたマグマから結晶化したジルコンと,ジュラ紀付加体のジルコンは大陸内部の比較的成熟した地殻で形成されたマグマから結晶化したジルコンの組成範囲と重なる (Barth et al., 2017).
以上の結果から, 1)後期ペルム紀付加体の形成時には,後背地に後期ペルム紀から前期三畳紀の花崗岩バソリスが分布し,ジュラ紀付加体形成時には後期ペルム紀から前期三畳紀および後期三畳紀からジュラ紀の花崗岩バソリスが分布していた,2)後期ペルム紀付加体にジルコンを供給した花崗岩バソリスは,低U/Ybを示す海溝側の未成熟な地殻物質から形成されたものであるのに対して,ジュラ紀付加体には高U/Ybを示す大陸内部の成熟した地殻物質から形成された花崗岩からジルコンが供給されていた,ことが考察される.以上を踏まえると,ジュラ紀付加体形成時にはそれまで海溝側に存在した未成熟な後期ペルム紀-前期三畳紀花崗岩バソリスの大部分が消滅したことが示唆される.