15:45 〜 16:00
[MTT37-07] 稠密GNSSによる対流圏遅延推定結果を用いたInSARの対流圏遅延補正
合成開口レーダ干渉解析(InSAR)において、対流圏遅延ノイズは最も大きな誤差要因のひとつである。特に、その空間的波長の類似性から、この種類のノイズは活断層の固着・すべりや火山変動に伴うmmレベルの変動を捉えようとした際に最も大きな阻害要因となることが多い。対流圏遅延ノイズは、好ましくない気象条件の場合には10cmやそれ以上となることもある。
もし、解析領域において稠密なGNSS観測網がある場合、InSARの対流圏ノイズ補正にGNSS解析により推定された対流圏遅延プロダクトを用いるのが最適である(Kinoshita, 2022)。現在、日本では、国土地理院の電子基準点GEONETの公開データに加えて、ソフトバンク独自基準点データも利用可能な状況となっているため、数値気象モデルを用いるなどの他の補正方法に比べ、GNSSの対流圏遅延推定結果を用いる補正手法には大きな優位性がある。
本発表では、InSAR対流圏遅延補正におけるソフトバンク独自基準点データの有効性に関する初期結果を報告する。テスト領域は、中央構造線が位置する四国東部に設定した。我々は、Yu et al. (2018) のITDモデル(反復的対流圏成分分解モデル)と同様の考え方に基づき、対流圏遅延量を関数で表現される成分とランダム成分に分離してモデル化した。ここで前者の成分としては、双線形関数で表現される傾き成分と地形に比例する成分を仮定し、後者のランダム成分は関数モデルからの残差をガウス関数を重みとした加重平均で補間して求めた。
同手法をALOS-2衛星SAR画像の解析で得られたInSAR変位データ(電離圏ノイズは別途補正)に適用した。撮影間隔が短いInSAR解析結果を用いることにより、実際の地殻変動成分は対流圏遅延ノイズより十分小さく、InSAR変位データの振幅は対流圏遅延による見かけ上のものと仮定することができる。今回例示するケースにおいては、GEONET F5解の遅延推定量とGipsyXを用いた解析から得られたソフトバンク独自基準点の遅延推定量の両方を補正に用いた場合、振幅の標準偏差が10.5mmから8.1mmに削減された。これは、23%の削減に相当する。
(謝辞)
本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは、「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じて、ソフトバンク株式会社およびALES株式会社より提供を受けたものを使用しました。また、国土地理院電子基準点の対流圏遅延データは、国土地理院の解析成果F5解のものを使用しました。InSAR解析には、RINC(Ozawa et al., 2016)を使用しました。
(図の説明)
(a) ALOS-2衛星データのInSAR解析から得られた(見かけ上の)変位。南行軌道(パス21)から2023年11月24日と2024年1月19日に撮像されたSAR画像を使用した。(b,c,d) それぞれ、GEONET F5解、ソフトバンク独自基準点、これらの両方の対流圏遅延推定量を用いた補正量。(f,g,h) b,c,dを用いて補正されたInSAR変位。(e) 解析エリアの標高分布。赤線は活断層に対応する。e以外は、単位はメートルである。
もし、解析領域において稠密なGNSS観測網がある場合、InSARの対流圏ノイズ補正にGNSS解析により推定された対流圏遅延プロダクトを用いるのが最適である(Kinoshita, 2022)。現在、日本では、国土地理院の電子基準点GEONETの公開データに加えて、ソフトバンク独自基準点データも利用可能な状況となっているため、数値気象モデルを用いるなどの他の補正方法に比べ、GNSSの対流圏遅延推定結果を用いる補正手法には大きな優位性がある。
本発表では、InSAR対流圏遅延補正におけるソフトバンク独自基準点データの有効性に関する初期結果を報告する。テスト領域は、中央構造線が位置する四国東部に設定した。我々は、Yu et al. (2018) のITDモデル(反復的対流圏成分分解モデル)と同様の考え方に基づき、対流圏遅延量を関数で表現される成分とランダム成分に分離してモデル化した。ここで前者の成分としては、双線形関数で表現される傾き成分と地形に比例する成分を仮定し、後者のランダム成分は関数モデルからの残差をガウス関数を重みとした加重平均で補間して求めた。
同手法をALOS-2衛星SAR画像の解析で得られたInSAR変位データ(電離圏ノイズは別途補正)に適用した。撮影間隔が短いInSAR解析結果を用いることにより、実際の地殻変動成分は対流圏遅延ノイズより十分小さく、InSAR変位データの振幅は対流圏遅延による見かけ上のものと仮定することができる。今回例示するケースにおいては、GEONET F5解の遅延推定量とGipsyXを用いた解析から得られたソフトバンク独自基準点の遅延推定量の両方を補正に用いた場合、振幅の標準偏差が10.5mmから8.1mmに削減された。これは、23%の削減に相当する。
(謝辞)
本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは、「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じて、ソフトバンク株式会社およびALES株式会社より提供を受けたものを使用しました。また、国土地理院電子基準点の対流圏遅延データは、国土地理院の解析成果F5解のものを使用しました。InSAR解析には、RINC(Ozawa et al., 2016)を使用しました。
(図の説明)
(a) ALOS-2衛星データのInSAR解析から得られた(見かけ上の)変位。南行軌道(パス21)から2023年11月24日と2024年1月19日に撮像されたSAR画像を使用した。(b,c,d) それぞれ、GEONET F5解、ソフトバンク独自基準点、これらの両方の対流圏遅延推定量を用いた補正量。(f,g,h) b,c,dを用いて補正されたInSAR変位。(e) 解析エリアの標高分布。赤線は活断層に対応する。e以外は、単位はメートルである。