16:15 〜 16:30
[MTT37-09] 稠密GNSS網による電離圏地震学:2024年1月能登半島地震の擾乱波形から複数音波源を読み解く
キーワード:GNSS-TEC、稠密網、地震時電離圏擾乱、2024年能登半島地震
2024年1月1日7:10UTに能登半島で発生したMw7.6の地震では、能登半島北端に近い震源から東北東、西南西に破壊が伝搬し、数十秒後に破壊が断層末端に到着した。稠密GNSS観測網であるGEONETのGPS, GLONASS, Galileo, QZSSデータから得られた電離圏全電子数(TEC)を用いて、地震時電離圏擾乱(Coseismic Ionospheric Disturbance, CsID)を調べた。その結果見出したいくつかの興味深い点について報告する。
地震の約9分後に、断層の形状を反映した細長い形状の正TEC異常が、能登半島先端部から佐渡にかけた断層直上に現れた。その異常域は形状を保ったまま数分間南に伝搬し、時間の経過と共に震源を中心とする円形の波面を形成して~0.9 km/sの電離圏F領域の音速で伝搬した。主擾乱の波形と振幅は方位依存性を持つが、断層に沿って100 km程離れた東北端と南西端の二箇所で励起された音波による擾乱の重ね合わせで説明できる。これは2023年2月トルコ地震の本震のCsIDの例と類似している(Bagiya, Heki & Gahalaut, 2022 GRL)。
本震による主擾乱に続いて、約20分に渡って多くの小ピークが続いた。もっとも大きな後続ピークは本震の信号の約8分後に現れ、幅広の円形波面が音速で広がった。最初にこれが7:18に断層西南端付近で発生したM6.1の最大余震に伴うCsIDである可能性を評価する。これまで国内でCsIDが検出された最小地震は、2007年中越沖地震(Mw6.6)であり(Cahyadi & Heki, 2015 GJI)、この余震はそれを大きく下回る。また、波面の中心は当該余震の震源に一致せず、断層東北端に近い海域にある。以上二点から、本震8分後の最大後続ピークは最大余震のCsIDではないだろう。また、その時刻には断層東北端で大きな余震の発生が報告されていないことから、音波の発生源は破壊に数分かかったスロー地震である可能性が高い。
なお、地震の約9時間前にX5.0の大きな太陽フレアが発生しており、地震前後には東西に伸びる複数波面をもつ内部重力波起源の移動性電離圏擾乱(TID)が日本列島を南に伝搬していた。ここで取り上げたCsIDの第二波はTIDの正のTEC異常を持つ領域でのみ強い信号強度を示す。内部重力波によるTIDの三次元構造では、TECの正異常を示す波面で電子密度のピークが通常高度より下がっている(e.g., Otsuka et al., 2013)。それによって、本来観測にかからない小さな信号強度のCsIDが例外的に観測された可能性が考えられる。
地震の約9分後に、断層の形状を反映した細長い形状の正TEC異常が、能登半島先端部から佐渡にかけた断層直上に現れた。その異常域は形状を保ったまま数分間南に伝搬し、時間の経過と共に震源を中心とする円形の波面を形成して~0.9 km/sの電離圏F領域の音速で伝搬した。主擾乱の波形と振幅は方位依存性を持つが、断層に沿って100 km程離れた東北端と南西端の二箇所で励起された音波による擾乱の重ね合わせで説明できる。これは2023年2月トルコ地震の本震のCsIDの例と類似している(Bagiya, Heki & Gahalaut, 2022 GRL)。
本震による主擾乱に続いて、約20分に渡って多くの小ピークが続いた。もっとも大きな後続ピークは本震の信号の約8分後に現れ、幅広の円形波面が音速で広がった。最初にこれが7:18に断層西南端付近で発生したM6.1の最大余震に伴うCsIDである可能性を評価する。これまで国内でCsIDが検出された最小地震は、2007年中越沖地震(Mw6.6)であり(Cahyadi & Heki, 2015 GJI)、この余震はそれを大きく下回る。また、波面の中心は当該余震の震源に一致せず、断層東北端に近い海域にある。以上二点から、本震8分後の最大後続ピークは最大余震のCsIDではないだろう。また、その時刻には断層東北端で大きな余震の発生が報告されていないことから、音波の発生源は破壊に数分かかったスロー地震である可能性が高い。
なお、地震の約9時間前にX5.0の大きな太陽フレアが発生しており、地震前後には東西に伸びる複数波面をもつ内部重力波起源の移動性電離圏擾乱(TID)が日本列島を南に伝搬していた。ここで取り上げたCsIDの第二波はTIDの正のTEC異常を持つ領域でのみ強い信号強度を示す。内部重力波によるTIDの三次元構造では、TECの正異常を示す波面で電子密度のピークが通常高度より下がっている(e.g., Otsuka et al., 2013)。それによって、本来観測にかからない小さな信号強度のCsIDが例外的に観測された可能性が考えられる。