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[MTT37-10] 令和6年能登半島地震後に観測された伝搬性電離圏擾乱の音波特性: 稠密GNSS受信機網による電離圏観測
キーワード:GNSS、GPS、電離圏、音波
地震や津波の後に、電離圏電子密度の変動が伝搬する現象である伝搬性電離圏擾乱(Traveling Ionospheric Disturbance; TID)が観測されることがある。全地球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System; GNSS)のデータから、電離圏電子密度の積分量である全電子数(Total Electron Content; TEC)を得ることができ、稠密なGNSS受信機網を用いることにより、これまでTIDによる全電子数変動の水平二次元構造が調べられてきた。本研究では、ソフトバンク株式会社と国土地理院が日本で運用している4,500以上のGNSS受信機から収集された全電子数データにトモグラフィー技術を適用し、TIDによる電子密度変動の三次元構造を推定した。2024年1月1日07:10UTに発生した能登半島地震の約9分後に、地震に起因すると考えられる全電子数の変動が観測された。地震発生時刻との時間差約9分は、地震によって発生した音波が音速で電離圏に到達する時間に相当する。トモグラフィー手法により、音波によって引き起こされたと考えられる電子密度変動の鉛直構造を明らかにすることに成功した。震源上空を通る南北-高度断面において、南向きに伝搬する電子密度変動は、高高度ほど北に傾く波面をもっていた。この電子密度変動は、高高度ほど大きな速度で南向きに伝搬し、時間とともにその波面が垂直に近くなることが分かった。この特徴を理解するため、地上から上空に伝搬する音波のモデル計算を行った。音速は、大気の温度の平方根に比例するため、高高度ほど音速は大きくなり、電子密度変動の波面の時間変化を説明することができた。
本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは,「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じて,ソフトバンク株式会社およびALES株式会社より提供を受けたものを使用しました。
本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは,「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じて,ソフトバンク株式会社およびALES株式会社より提供を受けたものを使用しました。