日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT37] 稠密多点GNSS観測が切り拓く地球科学の新展開

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)、西村 卓也(京都大学防災研究所)、大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、藤田 実季子(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

17:15 〜 18:45

[MTT37-P03] 2023年6月2日に高知県西部で発生した線状降水帯の解析

*村田 文絵1、高岡 凌大1、松山 航1佐々 浩司1 (1.高知大学理工学部)

キーワード:線状降水帯、大雨、水蒸気、気象レーダー

線状降水帯は日本で豪雨をもたらす代表的な降水システムのひとつである。線状の狭い領域に雨が長時間停滞して大雨をもたらす。この線状降水帯の発生・維持メカニズムはまだ十分わかっていないため予測が難しく,事例研究の蓄積が必要とされている。本研究は2023年6月2日朝に高知県西部で発生した線状降水帯を調査する。

この事例は,台風第2号東側の南風の暖湿気が四国のすぐ北にある梅雨前線に向かって流れ込んでいる状況で発生した。線状降水帯を形成する降水システムが発生し始めた6時頃は,瀬戸内海から流れ出す相対的に低温な北よりの気流と南風の暖湿気の収束域で降水帯が発生し,その後水平温度勾配の大きな領域に沿って線状降水帯が発生した。高知大学のX帯二重偏波レーダーである土佐清水レーダーでは,特に対流が活発な領域に向かって,高度3km付近から下降する相対的に乾燥した気流rear-inflowが観測された。より広い範囲の降水分布と気流の特徴を観測する気象庁室戸レーダーは,rear-inflowがすでに7時頃から降水システム内に観測されることを示しており,この線状降水帯はスコールラインの特徴を持つことが示唆される。スコールラインは世界の様々な地域で観測される特徴的な降水システムのひとつであり,顕著な水蒸気変動を伴っていることが多い。

高い時空間分解能での水蒸気変動は,降水システムの発生・発達と密接に関係している。ソフトバンクGNSS観測網により観測された高い時空間分解能でのGNSS可降水量の変動が,本事例の降水システムの発生・発達とどのように関係しているかを示す予定である。