日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT38] インフラサウンド及び関連波動が繋ぐ多圏融合地球物理学の新描像

2024年5月30日(木) 10:45 〜 12:15 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:山本 真行(高知工科大学 システム工学群)、西川 泰弘(高知工科大学 システム工学群)、市原 美恵(東京大学地震研究所)、乙津 孝之(一般財団法人 日本気象協会)、座長:西川 泰弘(高知工科大学 システム工学群)、中島 健介(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

11:30 〜 11:45

[MTT38-09] 北海道尻別岳の雪崩から発生した低周波音の検出の試み

*替地 青羅1柿並 義宏1 (1.北海道情報大学)

キーワード:インフラサウンド、尻別岳、雪崩、ヘリコプター、ホイルローダー

雪崩には緊急地震速報のような発生を即時に検知・通報する手段がほとんどない。一方で雪崩からインフラサウンドが発生しているとの研究報告があり、雪崩を遠地から観測できれば防災・減災に繋がる。本研究では北海道の尻別岳を観測対象として2022年12月から2023年3月末まで雪崩検知を目的としたインフラサウンドの観測を行った。センサーはINFRA-SOUND-SENSOR ADXⅢ-INF04LE(SAYA Inc製)で尻別岳から約3kmの地点にあるヘリ格納庫に1台設置した。
協力者からのフライト時刻表を基にインフラサウンド時系列データとスペクトログラムを確認した。ヘリの離着陸時刻付近で最大6Paほどの音を確認でき、全周波数帯に音が現れるのを確認できた。また、着陸時刻の数分前にはヘリが旋回しているとみられる周波数変化が確認でき、その変化からヘリの速度を求められる可能性がある。加えて、朝7時頃に1時間ほど続く、特徴的なスペクトルがみられた。全周波数帯に波が観測されるショック的な変動が周期的にみられることに加え、10 Hz程度のノイズが常時出ていることが分かった。この時間帯にはホイルローダーを用いて除雪をしているとの情報を協力者から得ており、ホイルローダーがセンサーに接近したり、離れたりしているのを捉えられている可能性がある。
以上のように、ノイズが多い環境では雪崩の音を特定することはインフラサウンドセンサー1台では困難であったため、衛星画像を調べたところ、衛星画像から雪崩とみられる場所を確認することができた。1日1度の観測で、かつ雲がかかっている状況が数日続いていたため、雪崩の発生時期を2023年3月9日から3月15日までの間でしか特定できなかった。そのため、未だ雪崩によるインフラサウンドは特定できず、現在も分析中である。
インフラサウンドセンサーのみで雪崩を特定できるアレイ観測を実施するため、同じ北海道の尻別岳を観測対象として、2023年11月からインフラサウンドセンサー3台を設置した。3台のセンサーを用いれば相関解析から到来時刻差が求められて、位置・時刻を推定できる。2024年3月末まで観測を行い、雪崩検知を試みる。